上手な生命保険の使い方|必要な死亡保障をライフステージに合わせて見直す考え方

目次

はじめに

生命保険は、家計の中でも見直しが難しい支出の一つです。

毎月保険料を支払っているものの、

「本当にこの保障が必要なのか」
「保険料が高すぎるのではないか」
「親が入ってくれていた保険をそのまま続けている」
「営業担当者に勧められるまま加入してしまった」

という方は少なくありません。

生命保険は、万が一のときに家族を守る大切な仕組みです。

一方で、入りすぎると家計を圧迫します。

本来、保険は不安を減らすためのものです。

ところが保険料が重くなりすぎると、今の生活費や貯蓄、投資に回すお金が減ってしまいます。

これでは、保険に入っているのに家計が苦しくなる「保険貧乏」の状態になってしまいます。

この記事では、金融商品の販売を行わない独立系FPの立場から、上手な生命保険の使い方と、ライフステージに合わせた死亡保障の見直し方を解説します。


生命保険は「入るもの」ではなく「使うもの」

生命保険の目的は家族の生活を守ること

生命保険というと、「入っておくと安心」というイメージがあります。

しかし、生命保険は何となく加入するものではありません。

本来の目的は、万が一のときに残された家族の生活を守ることです。

たとえば、家計を支えている人が亡くなった場合、その後の生活費、住居費、教育費などをどうまかなうかが問題になります。

その不足分を補うために生命保険があります。

つまり、生命保険は「不安だから入るもの」ではなく、「不足するお金を補うために使うもの」です。

この考え方を持つだけで、保険の選び方は大きく変わります。


保険で備えるべきなのは「貯金では対応できないリスク」

保険は、すべての不安に備えるためのものではありません。

保険で備えるべきなのは、起きる確率は高くなくても、起きたときに家計だけでは対応できない大きなリスクです。

死亡保障はその代表例です。

特に、子どもが小さい家庭では、万が一のときに長期間の生活費や教育費が必要になります。

貯蓄だけで対応するのが難しい場合、生命保険が大きな役割を果たします。

一方で、独身で扶養家族がいない場合や、すでに十分な資産がある場合は、大きな死亡保障は必要ないこともあります。

生命保険は、誰にでも同じ金額が必要なものではありません。

家族構成、収入、資産状況、住宅ローンの有無によって必要額は大きく変わります。


FP相談で実際にあった「保険貧乏」のケース

親が入ってくれていた保険をそのまま引き継いだケース

FPとして相談を受ける中で、よくあるのが「昔から入っている保険をそのまま続けている」というケースです。

ある方は、親が若い頃に加入してくれていた生命保険を社会人になってから引き継ぎました。

その後、社会人になって保険営業の方から別の保険を勧められ、さらに加入。

結婚後には、別のFP相談でまた保険を勧められ、気づけば複数の保険に加入していました。

本人は、

「保険に入っているから安心だと思っていた」
「でも毎月の保険料がかなり重い」
「内容を聞かれると、正直よく分からない」

という状態でした。

家計を確認すると、保険料が毎月の貯蓄や投資の余力を圧迫していました。

まさに、保険で安心を買っているはずなのに、保険料によって家計が苦しくなっている状態です。


問題は「保険に入っていること」ではなく「目的が重なっていること」

このケースで問題だったのは、保険に加入していたこと自体ではありません。

問題は、目的が整理されないまま保険が増えていたことです。

親が入ってくれていた保険。
社会人になって加入した保険。
結婚後に勧められた保険。

それぞれ加入した時期には理由があったかもしれません。

しかし、現在の家族構成や資産状況に照らして必要かどうかは、別の問題です。

生命保険は、加入した時点では必要だったとしても、ライフステージが変われば必要性も変わります。

見直しをしないまま保険を足していくと、保障が重複し、保険料だけが膨らんでしまいます。


必要な死亡保障額はライフステージで変わる

死亡保障は一生同じ金額ではない

生命保険で最も大切なのは、必要な死亡保障額は年齢や家族構成によって変わるということです。

若い頃に必要だった保障額が、老後まで同じとは限りません。

特に死亡保障は、ライフステージによって必要額が大きく変わります。

子どもが小さい時期は、大きな保障が必要になりやすいです。

理由は、残された家族の生活費や教育費を長期間まかなう必要があるからです。

一方で、子どもが成長し、教育費の見通しが立ち、配偶者の収入や貯蓄が増えてくれば、必要な死亡保障額は少しずつ減っていきます。

つまり、死亡保障は「増やす時期」と「減らす時期」があるのです。


子どもが小さい時期は保障を厚くする

子どもが小さい家庭では、死亡保障の必要性が高くなります。

たとえば、子どもが0歳や3歳の時点で家計を支える人が亡くなった場合、残された家族は長い期間の生活費と教育費を準備しなければなりません。

この時期は、必要保障額が最も大きくなりやすい時期です。

特に、片働き家庭や、住宅ローンがある家庭では、万が一の影響が大きくなります。

そのため、子どもが小さいうちは、一定の死亡保障を確保しておくことが重要です。

ただし、ここで大切なのは、必要以上に高額な保険に入ることではありません。

必要な生活費、教育費、公的保障、貯蓄を計算したうえで、不足分だけを保険で補うことです。


子どもが成長するにつれて保障は減らしていく

子どもが成長すると、必要な死亡保障額は少しずつ減っていきます。

たとえば、子どもが0歳のときは、大学卒業まで20年以上あります。

しかし、子どもが15歳になれば、教育費が必要な期間は短くなります。

すでに貯蓄が増えている場合もあります。

住宅ローンの残高が減っている場合もあります。

このように、時間が経つほど「これから必要なお金」は減っていきます。

そのため、死亡保障も同じように減らしていくのが自然です。

死亡保障を一生同じ金額で持ち続ける必要はありません。

むしろ、子どもの成長に合わせて保障額を下げることで、保険料を抑え、浮いたお金を貯蓄や資産形成に回すことができます。


必要保障額はどう考えるか

基本は「必要なお金」から「入ってくるお金」を引く

死亡保障額を考えるときは、感覚で決めないことが大切です。

「何となく3,000万円くらい必要」
「営業担当者に5,000万円と言われた」
「周りも入っているから同じくらい」

という決め方では、自分の家計に合っているか分かりません。

基本的な考え方はシンプルです。

必要保障額 = 残された家族に必要なお金 − 入ってくるお金・使える資産

この考え方で整理します。

残された家族に必要なお金には、生活費、教育費、住居費、葬儀費用などがあります。

一方で、入ってくるお金には、遺族年金、配偶者の収入、勤務先の死亡退職金、貯蓄などがあります。

保険で準備するのは、その差額です。


公的保障を考えずに保険を決めない

生命保険を考えるときに、必ず確認したいのが公的保障です。

日本には遺族年金制度があります。

亡くなった方の年金加入状況や家族構成によって、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れる場合があります。

もちろん、公的保障だけですべてをまかなえるとは限りません。

しかし、公的保障を全く考えずに死亡保障額を決めると、必要以上に保険に入りすぎる可能性があります。

生命保険は、公的保障で足りない部分を補うものです。

まず公的保障を確認し、そのうえで不足分を民間保険で準備するという順番が大切です。


貯蓄や資産が増えれば保険の必要額は下がる

生命保険の必要額は、資産状況によっても変わります。

たとえば、貯蓄がほとんどない家庭と、すでに1,000万円以上の金融資産がある家庭では、必要な死亡保障額は異なります。

資産が多いほど、万が一のときに保険で補う必要は小さくなります。

これは、保険を否定する話ではありません。

むしろ、保険と貯蓄・投資は役割が違うという話です。

保険は、まだ資産が十分にない時期に大きなリスクへ備える仕組みです。

一方で、資産が増えてくれば、保険に頼る部分は少しずつ減らせます。

若い頃は保険が必要でも、年齢を重ねて資産が増えれば、保険を縮小できる可能性があります。


ライフステージ別に見る死亡保障の考え方

独身の場合

独身で扶養家族がいない場合、大きな死亡保障は必要ないことが多いです。

亡くなった後に生活費を支えるべき家族がいないためです。

この場合、必要なのは葬儀費用や最低限の整理資金程度です。

ただし、親に仕送りをしている場合や、家族の生活を支えている場合は別です。

誰かが自分の収入に依存しているなら、死亡保障を検討する意味があります。

大切なのは、独身だから保険不要と決めつけることではありません。

「自分が亡くなったときに経済的に困る人がいるか」を考えることです。


結婚したばかりの場合

結婚すると、死亡保障の必要性は少し変わります。

配偶者が自分の収入に依存している場合、死亡保障が必要になることがあります。

一方で、夫婦共働きで、どちらも十分な収入がある場合は、大きな死亡保障は必要ないこともあります。

結婚したら必ず高額な生命保険に入るべき、というわけではありません。

配偶者の収入、生活費、貯蓄、住宅費を確認したうえで考えるべきです。

結婚は保険を見直すタイミングではありますが、保険を増やすタイミングとは限りません。


子どもが生まれた場合

子どもが生まれたタイミングは、死亡保障を最も真剣に考えるべき時期です。

子どもが小さいほど、残された家族に必要な生活費や教育費は大きくなります。

この時期は、死亡保障を厚くする合理性があります。

特に、家計の中心となる人に万が一のことがあった場合、残された配偶者がすぐに同じ収入を得られるとは限りません。

そのため、一定期間の生活費と教育費を保険で準備しておくことが大切です。

ただし、終身保険で高額な保障を準備すると保険料が高くなりがちです。

子どもが独立するまでの期間に備えるなら、定期保険や収入保障保険など、期間を区切った保険を活用する方が合理的な場合があります。


子どもが成長した場合

子どもが中学生、高校生、大学生と成長するにつれて、必要な死亡保障額は減っていきます。

すでに教育費の一部を支払い終えているからです。

また、大学卒業までの残り期間も短くなります。

この段階で、子どもが小さい頃と同じ死亡保障を持ち続けると、保障が過剰になっている可能性があります。

もちろん、住宅ローンや配偶者の老後資金など、別の課題が残っている場合は考慮が必要です。

それでも、子どもが成長すれば死亡保障を見直すべきタイミングであることは間違いありません。


子どもが独立した後

子どもが独立すると、死亡保障の必要性は大きく下がります。

残された配偶者の生活費は必要ですが、子どもの教育費や養育費は基本的に不要になります。

また、この時期にはある程度の貯蓄や退職金、年金見込みがある場合も多くなります。

そのため、高額な死亡保障を続ける必要があるかを確認しましょう。

子どもが独立した後も大きな死亡保障を続けている場合は、保険料が家計の負担になっていないかを見直す価値があります。


老後の場合

老後になると、死亡保障の目的は大きく変わります。

現役世代の死亡保障は、残された家族の生活費や教育費を守るためのものです。

一方で、老後の死亡保障は、葬儀費用や相続対策、配偶者の生活費補助などが中心になります。

この時期に、子育て世代と同じような高額保障を持ち続ける必要は通常ありません。

むしろ、保険料負担を減らし、医療費、介護費、生活費に備えることの方が重要になる場合もあります。

老後は、死亡保障よりも「生きている間に必要なお金」を重視する時期です。


保険を見直すときの注意点

今の保険をすぐに解約しない

保険を見直すときに注意したいのは、すぐに解約しないことです。

古い保険の中には、予定利率が高く、条件の良いものが含まれている場合があります。

また、健康状態によっては、新しい保険に入り直せない可能性もあります。

保険の見直しでは、まず現在の保障内容を確認することが大切です。

保険証券を見て、死亡保障額、保険期間、保険料、解約返戻金、特約内容を整理しましょう。

そのうえで、必要な保障と不要な保障を分けて考えます。


医療保険や貯蓄型保険と混同しない

生命保険を見直すときは、死亡保障、医療保障、貯蓄性を分けて考えることが大切です。

死亡保障は、亡くなったときに家族へお金を残すためのものです。

医療保険は、病気やケガで入院・手術したときの負担に備えるものです。

貯蓄型保険は、保障と貯蓄を組み合わせたものです。

これらを一緒に考えると、保険の内容が分かりにくくなります。

「保険料が高いけれど、何にいくら払っているのか分からない」という状態になりやすいのです。

保険は、目的ごとに分けて考えると整理しやすくなります。


保険料を下げた分を使い切らない

保険を見直して保険料が下がると、毎月の家計に余裕ができます。

ここで注意したいのは、浮いたお金をそのまま使い切らないことです。

保険料を下げた分は、貯蓄や資産形成に回すことで家計全体が強くなります。

生命保険を減らす目的は、単に支出を減らすことではありません。

将来に備える方法を、保険だけに偏らせないことです。

必要な保障を確保しながら、貯蓄や投資も育てていく。

これが家計にとってバランスの良い考え方です。


生命保険を上手に使うための考え方

保険は「不足分」を補う道具

生命保険は、家計のすべての不安を解決するものではありません。

必要な生活費や教育費があり、公的保障や貯蓄だけでは足りない場合、その不足分を補うために使うものです。

この考え方を持つと、必要以上に保険に入りすぎることを防げます。

逆に、必要な保障が足りない状態も防ぎやすくなります。

大切なのは、多いか少ないかではなく、自分の家計に合っているかです。


ライフステージごとに見直す

生命保険は、一度加入したら終わりではありません。

結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立、退職など、ライフステージが変わるたびに必要な保障額は変化します。

特に死亡保障は、子どもが小さい時期に大きくなり、成長するにつれて減っていくのが自然です。

その変化に合わせて保険を見直すことで、必要な保障を確保しながら保険料の無駄を減らせます。


保険と資産形成を分けて考える

保険と資産形成は、どちらも大切です。

しかし役割は違います。

保険は、万が一の大きなリスクに備えるものです。

資産形成は、将来の生活や選択肢を広げるためのものです。

保険に入りすぎると、資産形成に回すお金が不足します。

反対に、保険を削りすぎると、万が一のときに家族が困る可能性があります。

どちらか一方ではなく、バランスを取ることが重要です。


まとめ

生命保険は、家族を守るための大切な仕組みです。

しかし、必要以上に加入すると、家計を圧迫し、貯蓄や資産形成の妨げになることがあります。

特に、親が入ってくれていた保険をそのまま引き継ぎ、社会人になって追加で加入し、さらに別の相談で保険を増やしてしまうと、保険の目的が分からないまま保険料だけが重くなることがあります。

生命保険を考えるときは、まず必要な保障額を整理することが大切です。

重要なポイントをまとめます。

・生命保険は不安だから入るものではなく、不足分を補うもの
・必要な死亡保障額はライフステージで変わる
・子どもが小さい時期は大きな保障が必要になりやすい
・子どもが成長するにつれて死亡保障は減らしていく
・公的保障、配偶者の収入、貯蓄を考慮して必要額を計算する
・保険料が高すぎると家計や資産形成を圧迫する
・保険は加入後も定期的に見直すことが大切

生命保険は、入りすぎても、少なすぎても問題があります。

大切なのは、自分の家族構成、資産状況、ライフステージに合った保障を持つことです。

金融商品の販売を行わない独立系FPの立場から見ると、上手な生命保険の使い方とは、保険を増やすことではありません。

必要な時期に必要な保障を持ち、不要になった保障は減らしていくことです。

保険は家計を守るための道具です。

だからこそ、家計を苦しくしない形で、上手に活用していきましょう。

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