株式投資信託の値動きが大きいと感じたとき、次の選択肢として検討されやすいのが債券投資信託です。株式と債券を組み合わせることで、資産全体の値動きを抑えられる可能性があるため、新NISAやiDeCo、企業型確定拠出年金の商品にも債券投資信託が用意されています。
しかし、「債券」という言葉から、定期預金のように元本が確保される商品だと思っている人も少なくありません。債券投資信託には元本保証がなく、市場金利、発行体の信用状況、為替相場などによって基準価額が変動します。金利が上昇したときに債券価格が下落するという、初心者には少し分かりにくい特徴もあります。
また、個別の債券であれば、発行体が破綻しない限り、満期まで保有することで額面金額を受け取るのが基本です。一方、債券投資信託は複数の債券を継続的に入れ替えながら運用するため、原則として「満期まで待てば購入時の金額に戻る」という商品ではありません。
結論からいえば、債券投資信託は元本を確保するための商品ではなく、株式投資信託と組み合わせて資産全体の値動きを調整するための商品です。資産形成期に株式だけでは不安を感じる人や、退職などの資金使用時期が近づき、価格変動を抑えたい人にとって選択肢になります。
ただし、国内債券、外国債券、新興国債券、ハイイールド債券などでは、期待できる利回りも抱えるリスクも異なります。特に外国債券投資信託は、為替変動によって想定以上に大きく値下がりする場合があります。
この記事では、債券投資信託の仕組み、個別債券や預貯金との違い、金利と債券価格の関係、主な種類、為替ヘッジの考え方を、金融商品の販売を目的としない独立系FPの立場から解説します。
※本記事は2026年7月時点の制度や一般的な商品性に基づいています。特定の商品を推奨するものではありません。債券投資信託には元本割れの可能性があり、実際の商品性や費用は目論見書などで確認する必要があります。
債券投資信託とはどのような金融商品?
債券投資信託を理解するには、最初に債券そのものの仕組みを知っておく必要があります。債券は、国や企業などが投資家から資金を借りるために発行する有価証券です。
株式では、投資家が企業へ出資し、その企業の株主になります。一方、債券では、投資家が国や企業などへ資金を貸す立場になります。この違いにより、収益の得方や値動きの特徴も変わります。
そもそも債券とは何か
債券を発行する国や企業などを「発行体」といいます。発行体は、あらかじめ決められた条件に基づいて投資家へ利子を支払い、満期を迎えたら元本を返済するのが基本です。
国が発行する債券は国債、地方公共団体が発行するものは地方債、企業が発行するものは社債と呼ばれます。海外の国や企業が発行する外国債券もあります。
例えば、額面100万円、年利1%、満期5年の債券を購入したとします。発行条件どおりに利子が支払われ、発行体が破綻しなければ、年1万円の利子を受け取り、5年後には原則として額面100万円が返済されます。
ただし、債券なら必ず元本と利子を受け取れるわけではありません。発行体の財務状況が悪化すれば、利子や元本の支払いが滞る可能性があります。これを「信用リスク」といいます。
一般に、信用力が高い発行体の債券は利回りが低く、信用力が低い発行体の債券は利回りが高くなる傾向があります。高い利回りは無条件に有利なのではなく、元本や利子が予定どおり支払われない可能性などに対する見返りという側面があります。
債券投資信託は複数の債券をまとめて運用する
債券投資信託は、多くの投資家から集めた資金をまとめ、運用会社が複数の債券へ投資する金融商品です。投資家は債券投資信託を1本購入することで、複数の国債や社債などを間接的に保有します。
個人が国内外の債券を何十銘柄も購入するには、まとまった資金と管理の手間が必要です。債券投資信託であれば、金融機関によっては100円程度から購入でき、少額でも発行体、国、通貨、満期などを分散できます。
債券投資信託の主な収益源は、保有債券から受け取る利息と、債券価格の変化です。外国債券へ投資する商品では、これに為替相場の変動も加わります。これらの運用結果から信託報酬などの費用が差し引かれ、基準価額へ反映されます。
利息収入があっても、債券価格や為替相場がそれ以上に下落すれば、基準価額は下がります。そのため、「債券から利子が入るので損をしない」とは限りません。
債券投資信託と個別債券の違い
債券投資信託と個別債券の大きな違いは、満期の考え方です。個別債券には満期があり、発行体が破綻しなければ、満期時に額面金額で償還されるのが基本です。途中で市場価格が下落しても、満期まで保有できれば、原則として額面金額を受け取れます。
一方、一般的な債券投資信託は、保有する債券の満期が来るたびに資金を回収し、新しい債券へ再投資します。ファンド全体として債券を継続的に入れ替えるため、投資信託そのものには個別債券のような満期がありません。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 債券投資信託 | 個別債券 |
|---|---|---|
| 投資先 | 複数の債券 | 特定の債券 |
| 投資金額 | 少額から購入しやすい | 商品ごとに購入単位が異なる |
| 分散投資 | 1本で行いやすい | 複数購入するには資金が必要 |
| 満期 | ファンド自体には原則として満期がない | 債券ごとに満期がある |
| 元本 | 基準価額が変動し、保証されない | 発行体が破綻しなければ満期償還が基本 |
| 保有中の費用 | 信託報酬などがかかる | 通常、信託報酬はかからない |
| 債券の入れ替え | 運用会社が行う | 投資家が自分で管理する |
| 換金 | 基準価額で売却する | 途中売却では市場価格で売却する |
個別債券でも、満期前に売却すれば市場価格での取引となり、購入価格を下回る可能性があります。また、発行体が破綻すれば、満期まで保有しても元本が返済されない場合があります。
債券投資信託は、少額で分散でき、債券の入れ替えを運用会社へ任せられる一方、満期まで待って元本の回収を目指すという個別債券の特徴は持っていません。どちらが優れているかではなく、分散と管理のしやすさを重視するのか、満期と受取額の見通しを重視するのかによって選択が変わります。

債券投資信託と定期預金・個人向け国債の違い
債券投資信託は、預貯金や個人向け国債とも性質が異なります。
銀行の定期預金は、預金保険制度の対象となる金融機関であれば、原則として1金融機関につき預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息が保護されます。預金金利は低い場合がありますが、口座上の金額が市場金利の変化によって日々上下することはありません。
個人向け国債は、個人を対象に国が発行する債券です。発行後1年間は原則として中途換金できませんが、その後は一定の調整額を差し引いて中途換金できます。国が元本と利子の支払いを行い、額面金額を下回る価格で償還される商品ではありません。
これに対して、債券投資信託には元本保証がなく、金利や為替などによって基準価額が毎日変動します。株式投資信託より値動きが小さい傾向があっても、預貯金や個人向け国債と同じ「元本を確保する置き場所」ではありません。
資産の値動きを抑えながら一定の運用を目指したいなら、債券投資信託が選択肢になります。一方、近いうちに使う金額を確実に確保したいなら、預貯金や個人向け国債などのほうが目的に合う場合があります。「値動きを抑えたい」のか、「元本を確保したい」のかを分けて考えることが大切です。
債券の価格と金利は反対に動く
債券投資信託を理解するうえで、最も重要な仕組みの一つが、債券価格と市場金利の関係です。一般に、市場金利が上がると既に発行されている債券の価格は下がり、市場金利が下がると既発債券の価格は上がります。
債券には利子があるため、「金利が上がれば債券投資信託にも有利なのではないか」と思うかもしれません。しかし、既に保有している債券と、これから発行される債券では影響が異なります。
市場金利が上がると債券価格が下がる理由
額面100万円、年利1%の債券が市場で取引されているときに、新しく年利2%の債券が発行されたとします。どちらも発行体や満期などの条件が同じであれば、多くの投資家は、より多くの利子を受け取れる年利2%の債券を選びます。
そのままでは年利1%の既発債券を買いたい人が少なくなるため、既発債券は価格を下げて利回りを調整する必要があります。これが、市場金利が上がると既発債券の価格が下がる基本的な理由です。
債券投資信託が保有する債券の価格が下がれば、ファンドの基準価額も下落する要因になります。実際の価格変動は、満期までの期間、利率、信用力、市場環境などによって異なりますが、金利上昇局面では債券投資信託も元本割れする可能性があります。
市場金利が下がると債券価格が上がる理由
反対に、新しく発行される債券の金利が年0.5%へ下がった場合、年利1%の既発債券の魅力は相対的に高まります。その債券を購入したい投資家が増えれば、市場価格は上昇しやすくなります。
このため、市場金利が低下する局面では、債券投資信託の基準価額が上昇する場合があります。債券投資信託の値動きは、受け取る利息だけではなく、保有債券の市場価格によっても生じるということです。
ただし、金利と債券価格の関係は基本原則であり、基準価額が必ず単純に反応するとは限りません。外国債券であれば為替相場が変動し、社債であれば企業の信用状況も影響します。
金利上昇は債券投資信託に悪いことばかりではない
金利上昇は、既に保有している債券の価格を下げるため、短期的には債券投資信託の基準価額にとってマイナス要因です。一方、ファンドが満期を迎えた債券から資金を回収したり、新しい資金が入ったりしたときには、以前より高い利回りの債券を購入できるようになります。
新しく購入した債券から得られる利息が増えれば、中長期的にはファンドの収益改善につながる可能性があります。したがって、金利が上昇したからといって、債券投資信託を一律に売却すべきとはいえません。
運用期間が短い人にとっては、直近の価格下落の影響が大きくなります。一方、運用期間が長く、ファンドが高い利回りの債券へ徐々に入れ替えられる時間があれば、金利上昇後の利息収入を取り込めます。
金利上昇時の判断は、「債券価格が下がったか」だけではなく、資金を使うまでの期間と、その商品を保有する目的から考える必要があります。
満期までの期間が長い債券ほど金利の影響を受けやすい
一般に、満期までの期間が長い債券ほど、市場金利の変化による価格変動が大きくなります。
満期まで1年の債券であれば、比較的早く元本が償還され、新しい金利の債券へ投資できます。一方、満期まで20年ある債券は、現在の低い利率が長期間続くため、市場金利が上昇したときに魅力が大きく低下します。その結果、価格も大きく下がりやすくなります。
同じ国内債券投資信託でも、短期債を中心とする商品と長期債を中心とする商品では、値動きが異なります。「国内債券型だから値動きが小さい」と商品名だけで判断せず、保有債券の満期までの期間を確認しましょう。
デュレーションとは何か
債券投資信託の商品説明や月次レポートには、「デュレーション」という言葉が掲載されている場合があります。デュレーションには複数の意味や計算方法がありますが、商品選びでは、金利変動に対して債券価格がどの程度反応するかを示す目安と考えると分かりやすいでしょう。
一般に、デュレーションが長いほど金利変動の影響を大きく受け、短いほど影響は小さくなる傾向があります。
例えば、修正デュレーションが5年の債券は、ほかの条件が変わらないと仮定すると、市場金利が1%上昇した場合に価格が約5%下落するのが一つの目安です。反対に、市場金利が1%低下すれば、価格は約5%上昇する方向に働きます。
ただし、これは値動きを簡略化した概算であり、実際の変化を保証するものではありません。信用状況、為替相場、金利変化の幅などによって結果は異なります。
初心者の場合は、計算方法まで覚える必要はありません。「デュレーションが長い債券投資信託ほど、金利の変化によって基準価額が大きく動きやすい」と理解しておけば、商品を比較しやすくなります。
債券投資信託の主な種類
債券投資信託には、投資する国、通貨、発行体、信用力などによってさまざまな種類があります。「債券」という共通点があっても、商品によって値動きは大きく異なります。
利回りの高さだけで選ばず、どのリスクを取ることでその利回りが生まれているのかを確認することが大切です。
国内債券投資信託
国内債券投資信託は、日本国債、地方債、国内企業の社債などへ投資する商品です。円建て債券を中心に保有するため、通常は外国為替相場の影響を受けません。
外国債券や株式と比較すると値動きが小さい傾向があり、資産全体の価格変動を抑える目的で組み入れやすい商品です。ただし、元本保証ではなく、国内金利が上昇すれば保有債券の価格が下落し、基準価額も下がる可能性があります。
国内債券は期待利回りが低い場合もあるため、信託報酬の影響を受けやすい点にも注意が必要です。ファンドの債券利回りが低いときに信託報酬が高ければ、投資家が得られる収益が限られる可能性があります。
国内債券投資信託を選ぶ際は、信託報酬に加え、国債と社債の比率、平均残存期間、デュレーションなどを確認します。
先進国債券投資信託
先進国債券投資信託は、米国や欧州など、主に先進国の国債や社債へ投資します。日本より市場金利が高い国へ投資する商品では、国内債券より高い利息収入を期待できる場合があります。
一方、投資先の国の金利変動に加え、為替相場の影響を受けます。為替ヘッジなしの商品では、債券価格が上昇しても、円高が進めば円換算後の基準価額が下落する可能性があります。
例えば、外貨建ての債券価格が変わらなくても、投資先通貨に対して円が10%上昇すれば、円換算した資産価値はおおむね下がる方向に動きます。そのため、先進国債券投資信託は、国内債券投資信託より大きく値動きする場合があります。
新興国債券投資信託
新興国債券投資信託は、経済成長の途上にある国の国債や企業の社債などへ投資します。先進国より金利や債券利回りが高い場合があり、高い利息収入を期待して選ばれることがあります。
しかし、高い利回りには理由があります。新興国では、政治や経済の不安定化、急激なインフレ、財政悪化、通貨下落、取引市場の流動性低下などが起きる可能性があります。発行体の信用力が低下すれば、債券価格も大きく下がります。
新興国債券は「株式より安全な債券」とは一概にいえません。市場環境によっては、株式投資信託に近い大きな値動きになることもあります。
資産全体の安定性を高める目的で債券を組み入れる場合、新興国債券だけでは期待した効果を得られない可能性があります。高い利回りだけでなく、信用リスクや為替リスクを含めて判断しましょう。
社債型・ハイイールド債券投資信託
社債型の投資信託は、企業が発行する債券へ投資します。国債と比較して企業が倒産する可能性がある分、一般に高い利回りが設定される傾向があります。
社債のなかでも、信用格付けが相対的に低い債券を「ハイイールド債」と呼びます。高い利回りを期待できる一方、景気後退や企業業績の悪化によって、債券価格が大幅に下落したり、元本や利子が予定どおり支払われなかったりする可能性があります。
景気が悪化すると、投資家が信用力の低い債券を避けるため、ハイイールド債は株式と同時に大きく下落することがあります。そのため、株式投資信託の値下がりを補う目的で債券を保有する場合、ハイイールド債では十分な分散効果を得られないことがあります。
「債券」という分類だけを見るのではなく、国債なのか社債なのか、社債ならどの程度の信用力があるのかを確認する必要があります。
物価連動債投資信託
物価連動債は、物価の動きに応じて元本などが調整される仕組みを持つ債券です。一般的な固定利付債は、物価が上昇しても受け取る利子や元本の額面が変わらないため、お金の実質的な価値が低下する可能性があります。
物価連動債は、インフレへの対応を目的として資産の一部に組み入れられることがあります。ただし、物価が上がれば必ず基準価額も上がるわけではありません。
市場が予想していたインフレ率と実際の物価動向の違い、市場金利、需給などによって価格は変動します。物価連動債投資信託も元本保証ではなく、短期的には値下がりする可能性があります。
為替ヘッジあり・なしの違い
外国債券投資信託を選ぶ際に、特に確認したいのが為替ヘッジの有無です。同じ国や債券へ投資する商品でも、為替ヘッジありとなしでは、値動きや期待できる収益が異なります。
為替ヘッジなしは円換算額が為替で変動する
為替ヘッジなしの外国債券投資信託は、投資先通貨と円の為替変動を基本的にそのまま受けます。
投資先通貨に対して円安が進めば、外貨建て資産を円に換算した価値が増えるため、基準価額の上昇要因になります。反対に円高が進めば、円換算額が減少し、基準価額の下落要因になります。
例えば、債券部分で年3%の収益が出ても、投資先通貨に対して円が10%上昇すれば、為替変動によるマイナスのほうが大きくなる可能性があります。
為替ヘッジなしの外国債券投資信託は、外国債券だけでなく外貨にも投資する商品と考えると分かりやすいでしょう。債券価格の変動が小さくても、為替によって基準価額が大きく動く場合があります。
為替ヘッジありは為替変動を抑える仕組み
為替ヘッジありの商品は、為替予約などの取引を利用し、投資先通貨と円の為替変動による影響を抑えることを目指します。外国債券そのものの値動きや利息収入を、円ベースでより反映しやすくする仕組みです。
ただし、為替変動の影響を完全になくせるとは限りません。また、為替ヘッジにはコストがかかります。一般に、日本の短期金利より投資先通貨の短期金利が高い場合、その金利差などがヘッジコストの要因になります。
外国債券の利回りが高くても、ヘッジコストが大きければ、その利回りの一部または大部分が相殺される可能性があります。為替ヘッジありの商品を選ぶときは、債券自体の利回りだけでなく、ヘッジ後にどの程度の収益を期待できるかを確認する必要があります。
資産の安定性を重視するならどちらを選ぶか
外国債券を株式投資信託の値動きを抑える目的で保有するなら、為替ヘッジありの商品は検討しやすい選択肢です。為替の影響を抑えることで、外国債券本来の値動きを資産配分に反映しやすくなるためです。
一方、円安による円換算額の上昇も期待し、外貨を資産の一部として保有したい場合は、為替ヘッジなしの商品も選択肢になります。ただし、円高になれば基準価額が下がることを受け入れなければなりません。
為替ヘッジありとなしのどちらが常に有利かは、将来の為替や金利によって変わるため、事前には分かりません。判断するときは、為替で利益を狙いたいのか、債券を資産の安定部分として持ちたいのかを明確にします。
「外国債券の金利が高いから」という理由だけで選ばず、その利回りが為替変動やヘッジコストを考慮した後にも家計の目的と合っているかを確認することが大切です。
債券投資信託のメリット
債券投資信託の主な役割は、高い収益だけを追求することではなく、株式投資信託とは異なる値動きを取り入れ、資産全体の変動を調整することです。少額でも複数の債券へ投資できるため、個人で債券を一本ずつ購入する場合より、発行体や満期を分散しやすくなります。
少額から複数の債券へ分散できる
個別債券は、商品によって10万円、100万円などの購入単位が設定されています。複数の国や企業が発行する債券へ分散するには、ある程度まとまった資金が必要です。
債券投資信託は、多くの投資家から集めた資金をまとめて運用するため、金融機関によっては100円程度から購入できます。1本の商品に複数の国債や社債が組み入れられていれば、少ない資金でも発行体を分散できます。
ただし、商品によっては特定の国、企業、通貨に偏っていることがあります。投資信託だから自動的に十分な分散ができるとは限らないため、目論見書や月次レポートで投資先を確認しましょう。
個人では購入しにくい海外債券や社債にも投資できる
海外の国債や社債のなかには、個人では購入しにくい銘柄や、大きな購入単位が設定されているものがあります。債券投資信託を利用すれば、個人が直接購入しにくい債券にも間接的に投資できます。
運用会社が発行体の信用力、金利動向、流動性などを確認し、運用方針に沿って債券を選ぶ点も特徴です。ただし、専門家が運用しても、信用悪化や市場価格の下落を完全に避けられるわけではありません。
債券の償還や入れ替えを運用会社に任せられる
個別債券を複数保有する場合は、それぞれの利払日や満期を管理し、償還された資金をどこへ再投資するか自分で判断します。
債券投資信託では、満期を迎えた債券から回収した資金を、運用会社が新しい債券へ再投資します。発行体の信用状況が変化した場合には、運用方針に応じて保有債券を売却することもあります。
管理の手間を抑えられる一方、どの債券をいつ売買するかを投資家が細かく指定することはできません。運用会社の判断に任せられることは、メリットであると同時に自由度が低いという側面もあります。
株式と組み合わせて資産全体の値動きを抑えられる
債券は、一般に株式より値動きが小さい傾向があります。株式投資信託と組み合わせることで、株式だけを保有する場合より資産全体の価格変動を抑えられる可能性があります。
例えば、株式100%では値動きが大きすぎると感じる人が、株式80%、債券20%に分ければ、株価下落時の損失を一定程度抑えられる場合があります。債券を組み入れることで運用を続けやすくなるなら、期待できる収益が多少低下しても、家計に合った配分になることがあります。
ただし、株式と債券が常に反対に動くわけではありません。インフレや急激な金利上昇が起きた局面では、株式と債券が同時に下落することもあります。また、ハイイールド債券や新興国債券は株式と似た値動きになりやすく、期待した分散効果を得られない場合があります。
受取時期が近づいた資産の調整に活用できる
老後資金などを長期間運用する場合、資産形成期は株式投資信託を中心にし、受取時期が近づいたら債券比率を増やす方法があります。
受取直前まで株式を多く保有していると、退職前後の株価下落によって、必要な金額を確保できなくなる可能性があります。受取開始のおおむね10年前から、株式の一部を債券や元本確保型へ段階的に移せば、特定の時期の株価に左右されるリスクを抑えやすくなります。
ただし、債券投資信託にも価格変動があります。退職後すぐに使う予定の金額は預貯金や元本確保型、数年先まで運用できる資金は債券、さらに長く使わない資金は株式というように、使用時期に応じて分ける方法が現実的です。
分配金や売却益を得られる可能性がある
債券投資信託では、保有債券から受け取る利息がファンドの収益になります。基準価額が購入時より上昇した状態で売却すれば、売却益を得られる可能性もあります。
商品によっては分配金が支払われますが、分配金はファンドの純資産から支払われるため、必ずしも利益とは限りません。分配後は、その金額に相当する分だけ基準価額が下がる要因になります。
分配金の多さだけではなく、基準価額の変化と分配金を合わせたトータルリターンで運用成果を確認しましょう。長期の資産形成期には、分配を抑えてファンド内で運用を続ける商品のほうが、複利効果を生かしやすい場合があります。
債券投資信託のデメリットとリスク
債券投資信託は、債券という名称から安全性が高いと思われやすい商品です。しかし、預貯金や個人向け国債とは異なり、複数の要因によって基準価額が変動します。
元本保証がない
債券投資信託には元本保証がありません。金利の上昇、発行体の信用悪化、為替相場の変化などによって、購入時より基準価額が下がる可能性があります。
個別債券のように「満期まで持てば額面金額で償還される」という考え方も、一般的な債券投資信託には当てはまりません。ファンドは複数の債券を継続的に入れ替えるため、投資家は売却時の基準価額で換金します。
元本を減らしたくない資金や、近いうちに使う金額の置き場所としては、預貯金や個人向け国債などと比較する必要があります。
金利上昇によって基準価額が下落する
市場金利が上昇すると、既に発行されている債券の価格は下落する傾向があります。特に満期までの期間やデュレーションが長い商品は、金利変動の影響を大きく受けます。
金利上昇後は、より高い利回りの債券へ再投資できるため、中長期的な利息収入が改善する可能性もあります。しかし、近いうちに売却する場合は、価格下落から回復する時間を確保できないことがあります。
資金を使うまでの期間が短い人ほど、デュレーションが長い債券投資信託には慎重な判断が必要です。
発行体の信用悪化や破綻の影響を受ける
国や企業の財政・経営状況が悪化すると、利子や元本が予定どおり支払われない可能性が高まります。実際に支払いが滞らなくても、信用格付けの引き下げなどによって債券価格が下落することがあります。
複数の債券へ分散すれば、一つの発行体が破綻した場合の影響を抑えられますが、信用リスクそのものをなくすことはできません。
高い利回りを掲げる商品ほど、信用力の低い債券を多く保有している可能性があります。利回りだけでなく、国債と社債の比率、平均格付け、格付けの低い債券の割合を確認しましょう。
外国債券は為替変動の影響を受ける
為替ヘッジなしの外国債券投資信託は、円高によって基準価額が下落する可能性があります。債券から利息を受け取っていても、為替差損のほうが大きければ、円換算した運用成果はマイナスになります。
為替ヘッジありの商品は為替変動を抑えることを目指しますが、ヘッジコストがかかります。投資先通貨と円の金利差が大きい場合、外国債券の高い利回りがヘッジコストで相殺されることもあります。
外国債券を選ぶときは、表示されている債券利回りだけでなく、為替変動またはヘッジコストを含めて考える必要があります。
保有中に信託報酬がかかる
債券投資信託では、保有中に信託報酬が継続して差し引かれます。株式投資信託と同様に、信託報酬は日々の基準価額へ反映されるため、投資家が別途支払っている感覚を持ちにくい費用です。
債券は株式より期待できる収益が低いこともあり、信託報酬の影響が相対的に大きくなります。例えば、債券の利回りが年1%程度で信託報酬が年0.8%なら、ほかの費用や価格変動を考慮する前でも、収益の多くがコストで失われます。
同じ指数や地域へ投資する商品を比較する場合は、信託報酬や総経費率を確認しましょう。
高利回りの商品ほど高いリスクを抱えている可能性がある
債券の利回りは、発行体の信用力、通貨、満期までの期間、市場の流動性などによって変わります。信用力が低い発行体は、投資家に購入してもらうため、相対的に高い利回りを提示する必要があります。
したがって、高利回りは無条件のメリットではありません。ハイイールド債券や新興国債券では、信用悪化、通貨下落、流動性低下などによって、利息収入を上回る値下がりが生じる可能性があります。
利回りの数字を見るときは、「なぜこの商品は高い利回りを得られるのか」を確認することが大切です。
債券投資信託のインデックス型とアクティブ型
債券投資信託にも、特定の指数への連動を目指すインデックス型と、運用会社の判断で債券を選ぶアクティブ型があります。
債券インデックス型の仕組み
インデックス型は、国内債券や先進国債券などの指数に連動する運用成果を目指します。多くの債券へ分散しやすく、運用方針が比較的分かりやすいほか、信託報酬が低い商品も多くあります。
一方、債券指数は発行残高を基準に構成比率を決めるものが多く、債務の多い国や企業の比率が高くなる場合があります。また、指数の金利リスクや信用リスクを基本的にそのまま受け入れるため、金利上昇や信用悪化を予想しても、運用担当者の判断で大きく回避することは通常ありません。
債券アクティブ型の仕組み
アクティブ型は、金利見通し、発行体の信用力、満期までの期間などを分析し、指数を上回る成果や独自の運用目標を目指します。
金利上昇が予想されるときにデュレーションを短くする、信用力の低下が懸念される企業の債券を減らすなど、指数とは異なる対応ができる可能性があります。
ただし、運用判断が正しいとは限りません。見通しが外れれば指数を下回ることがあり、信託報酬もインデックス型より高い傾向があります。
| 比較項目 | インデックス型 | アクティブ型 |
|---|---|---|
| 運用目標 | 債券指数への連動を目指す | 独自の運用目標に基づく |
| 銘柄選定 | 指数の構成が基本 | 金利や信用力を分析して選ぶ |
| デュレーション | 指数に近づける | 市場見通しに応じて調整する場合がある |
| 信託報酬 | 低い傾向 | 高い傾向 |
| 主な利点 | 分かりやすく、低コストで分散しやすい | 指数と異なる対応ができる |
| 主な注意点 | 指数が抱えるリスクを受ける | 運用判断が成果につながるとは限らない |
初心者が幅広い債券へ低コストで分散したい場合は、インデックス型を基本に検討しやすいでしょう。アクティブ型を選ぶなら、過去の利回りだけでなく、デュレーションや信用リスクをどのように管理する商品なのかを確認します。
株式投資信託と債券投資信託の違い
株式投資信託は企業の成長による値上がりや配当を主な収益源とし、債券投資信託は利息収入や債券価格の変化を収益源とします。
一般に、株式は高い成長性を期待できる一方、値動きが大きくなります。債券は期待できる収益が低い傾向にありますが、株式より値動きを抑えやすい資産です。
| 比較項目 | 株式投資信託 | 債券投資信託 |
|---|---|---|
| 主な収益源 | 企業成長、配当、株価上昇 | 利息、債券価格の変化 |
| 値動き | 比較的大きい | 比較的小さい傾向 |
| 主なリスク | 株価、景気、為替など | 金利、信用、為替など |
| 成長性 | 比較的高い | 比較的低い傾向 |
| 家計での役割 | 長期的に資産を増やす | 資産全体の値動きを調整する |
| 主な運用時期 | 資産形成期 | 形成期のリスク調整、受取準備期 |
ただし、外国債券、新興国債券、ハイイールド債券は大きく変動する可能性があり、国内株式より常に安全とは限りません。
また、株式と債券は常に反対方向へ動くわけではありません。金利上昇によって債券価格が下がり、同時に企業の資金調達負担が増えて株価も下落することがあります。
両者を組み合わせる目的は、どちらかが必ず上がることを期待するのではなく、異なる収益源とリスクを持つ資産へ分散することです。
家計で債券投資信託はどのような役割を持つ?
債券投資信託は、預貯金の代わりではなく、運用資産の値動きを調整する役割を持ちます。株式100%では不安を感じる人が債券を加えることで、下落時にも運用を続けやすくなる可能性があります。
一方、急な支出に備える生活防衛資金は、すぐに引き出せる預貯金で確保することが基本です。数年以内に必要な教育費や住宅資金も、元本保証のない債券投資信託だけで準備するのは慎重に考えましょう。
新NISAでは株式投資信託だけでなく、一定の債券を含むバランス型なども利用できます。iDeCoや企業型DCでは、国内外の債券投資信託が選択肢に含まれることがあります。制度の税制優遇があっても、債券投資信託の値下がりがなくなるわけではありません。
老後資金については、受取開始のおおむね10年前から、株式投資信託の一部を債券や元本確保型へ移す方法があります。例えば、受取まで10年の時点で株式60%・債券等40%、5年前には株式30~40%・債券等60~70%へ調整するなど、数年かけて価格変動を抑えていきます。
この配分はあくまで一例です。年金形式で受け取り、受取開始後も長く運用する場合は、一定の株式比率を残す選択肢があります。年齢だけでなく、資金を使う時期、公的年金、退職金、預貯金などを含めて判断しましょう。
債券投資信託が向いている人・向いていない人
債券投資信託が向いている可能性があるのは、株式だけでは値動きが大きすぎると感じる人、少額で複数の債券へ分散したい人、退職などの資金使用時期が近づいている人です。個別債券の満期や再投資を自分で管理したくない人にも利用しやすいでしょう。
一方、次のような人は慎重に考える必要があります。
- 元本保証を求めている
- すぐに使う資金を運用しようとしている
- 高い利回りだけを基準に選ぼうとしている
- 為替変動やヘッジコストを理解していない
- 満期まで持てば購入金額に戻ると思っている
- 株式と必ず反対に動くことを期待している
値動きを一切受け入れられない場合は、債券投資信託ではなく、預貯金や個人向け国債などを比較したほうが目的に合うことがあります。
FP相談の現場で想定される事例
58歳の会社員が、企業型DCと新NISAで合計1,500万円を保有し、その大部分を株式投資信託で運用しているケースを考えます。退職まで8年となり、株価下落への不安から、全額を為替ヘッジなしの外国債券投資信託へ変更しようとしていました。
しかし、為替ヘッジなしの外国債券は、円高になれば基準価額が大きく下落する可能性があります。株式から債券へ変更しても、想定していたほど資産の値動きが小さくならないことが考えられます。
このケースでは、まず退職後5年以内に使う予定の金額を確認します。すぐ使う資金は預貯金や元本確保型へ移し、それより先まで運用できる部分に国内債券や為替ヘッジあり外国債券を組み合わせます。さらに長期間使わない部分には株式を残します。
株式から債券へ一度に移すのではなく、毎年一定割合をスイッチングし、数年かけて目標配分へ近づける方法もあります。債券へ変更すること自体を目的にせず、「いつ使う資金の値動きを、どの程度抑えたいか」から商品を選ぶことが大切です。
初心者が陥りやすい債券投資信託の失敗例
最も多い誤解は、債券だから元本割れしないと考えることです。債券投資信託の基準価額は、金利、信用力、為替などによって変動します。
高い利回りだけで新興国債券やハイイールド債券を選ぶことにも注意が必要です。高い利回りは、高い信用リスクや為替リスクなどを取る対価である可能性があります。
外国債券の利回りを見て購入し、円高による損失を想定していなかったという失敗もあります。為替ヘッジありなら、金利差などによるヘッジコストを確認しなければなりません。
また、分配金が多いほど運用成果もよいとは限りません。元本の一部を取り崩して分配している場合があるため、基準価額と分配金を合わせたトータルリターンを見ます。
信託報酬も見落とせません。期待利回りが比較的低い債券投資信託では、年0.5%、1%というコストの差が運用成果へ大きく影響する場合があります。
債券投資信託を選ぶ8つの手順
債券投資信託を選ぶときは、次の順番で確認すると、利回りの高さだけに左右されにくくなります。
- 株式の値動きを抑える、受取準備をするなど、債券を持つ目的を決める
- 投資する資金を使うまでの期間を確認する
- 国内債券と外国債券のどちらが目的に合うか考える
- 国債、社債、ハイイールド債などの信用力を確認する
- 平均残存期間やデュレーションを確認する
- 外国債券では為替ヘッジの有無とコストを確認する
- 信託報酬、純資産総額、分配方針、信託期間を比較する
- 株式、債券、預貯金を含めた資産全体で配分を決める
商品名だけでは投資内容を判断できません。目論見書や月次レポートで、投資国、通貨、格付け、デュレーション、為替ヘッジの有無などを確認しましょう。
債券投資信託に関するよくある質問
債券投資信託は元本割れしますか?
元本割れする可能性があります。市場金利の上昇、発行体の信用悪化、為替変動などによって、基準価額が購入時を下回る場合があります。
金利上昇時は債券投資信託を売却すべきですか?
一律に売却すべきとはいえません。金利上昇は短期的には債券価格の下落要因ですが、新しい資金を高い利回りの債券へ再投資できるため、中長期的には利息収入の改善につながる可能性があります。
資金を使うまでの期間、デュレーション、保有目的から判断しましょう。
国内債券と外国債券はどちらがよいですか?
資産の値動きを抑えることを重視するなら、為替変動を受けない国内債券を検討しやすいでしょう。外国債券は高い利回りを期待できる場合がありますが、為替変動またはヘッジコストが加わります。
どちらが有利かではなく、債券にどのような役割を持たせるかによって選択が変わります。
為替ヘッジありとなしはどちらを選ぶべきですか?
債券を株式の値動きを抑える目的で保有するなら、為替ヘッジありを検討しやすくなります。外貨も保有し、円安による円換算額の上昇を期待するなら、ヘッジなしも選択肢です。
ただし、ヘッジありにはコストがあり、ヘッジなしには円高による損失の可能性があります。
債券投資信託と個人向け国債はどちらがよいですか?
元本を確保することを優先するなら、個人向け国債が目的に合いやすいでしょう。複数の国内外債券へ分散し、価格変動を受け入れながら運用したいなら、債券投資信託が選択肢になります。
元本確保と運用による収益のどちらを優先するかで判断します。
株式と債券は何対何で持つべきですか?
年齢だけでなく、資金を使うまでの期間、預貯金、退職金、値下がりへの耐性によって異なります。
受取まで長く、値動きを受け入れられる人は株式を多めにし、受取時期が近い人や価格変動を抑えたい人は債券等を増やす方法があります。年代別の配分は目安として使い、家計全体で調整しましょう。
債券投資信託を持たず、預貯金で代用できますか?
値動きを抑えることだけが目的なら、預貯金で代用する考え方もあります。預貯金には市場価格の変動がなく、近いうちに使う資金の置き場所に適しています。
一方、債券投資信託には利息収入や金利低下時の値上がりを期待できる可能性があります。元本確保を優先するか、一定の価格変動を受け入れて運用するかによって使い分けます。
まとめ|債券投資信託は安全資産ではなく値動きを調整する資産
債券投資信託は、少額から複数の国債や社債へ分散でき、債券の償還や入れ替えを運用会社へ任せられる金融商品です。株式投資信託と組み合わせることで、資産全体の値動きを抑えられる可能性があります。
一方、元本保証はありません。市場金利が上昇すれば保有債券の価格は下落し、発行体の信用状況が悪化すれば利子や元本の支払いに不安が生じます。外国債券では、為替変動やヘッジコストも運用成果へ影響します。
個別債券と異なり、一般的な債券投資信託は、満期まで待てば購入時の金額に戻る商品ではありません。また、高い利回りには、信用、為替、残存期間などの高いリスクが伴っている可能性があります。
商品を選ぶ際は、利回りだけでなく、投資する国、通貨、国債と社債の比率、信用格付け、デュレーション、為替ヘッジ、信託報酬を確認しましょう。
資産形成期は株式投資信託を中心にし、値動きが不安なら債券を組み合わせます。受取開始が近づいたら、債券や元本確保型の比率を段階的に増やし、近いうちに使う資金の価格変動を抑えていきます。
債券投資信託は「債券だから安全」と考えて選ぶ商品ではありません。預貯金、個人向け国債、株式投資信託との違いを理解し、家計のなかでどのような役割を持たせるかを決めたうえで活用することが大切です。







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