貯蓄が苦手でも大丈夫|お金がない・あると使ってしまう人の貯め方をFPが解説

「貯蓄しなければいけないと分かっているのに、なかなかお金を残せない」「家計に余裕がなく、貯蓄まで手が回らない」「口座にお金があると、つい使ってしまう」。このような悩みを抱えている人は、決して少なくありません。

貯蓄ができないと、自分の意思が弱いように感じてしまうことがあります。しかし、実際には本人の性格だけが原因とは限りません。子どもの成長によって教育費が増えた、収入が減った、住宅費や保険料の負担が大きいなど、そもそも貯蓄に回せるお金が少ない家庭もあります。一方、一定の収入があっても、貯める仕組みがないために、毎月なんとなく使い切っているケースも見られます。

大切なのは、貯蓄できない原因を確かめ、それに合った方法を選ぶことです。すでに家計を切り詰めている人が、乾いた雑巾をさらに絞るような節約を続けても、生活が苦しくなるだけかもしれません。反対に、ある程度の余裕がある人は、生活費を細かく削るよりも、給料日に自動でお金を分けるほうが効果的です。

この記事では、家計に余裕がない人と、お金があると使ってしまう人に分けて、貯蓄を始める方法を説明します。先に結論をお伝えすると、貯蓄が苦手な人ほど、意思の力に頼らず、少額から自動的に貯まる仕組みを作ることが大切です。

目次

貯蓄が苦手な人は「貯められない原因」から確認する

「貯金ができない」という結果は同じでも、その原因は家庭によって異なります。原因を確認せず、いきなり節約や投資を始めると、家計に合わず長続きしない可能性があります。

まずは、自分がどの状態に当てはまるのかを確認してみましょう。

家計に余裕がなく、貯蓄するお金を確保できない

収入から生活に必要な支出を差し引くと、ほとんどお金が残らないケースです。子育て中で教育費や食費が増えている、住宅費の負担が大きい、育児や介護によって働ける時間が限られているなど、さまざまな事情が考えられます。

このような家庭では、「毎月、収入の20%を貯蓄しましょう」といった一般的な目安が、そのまま当てはまるとは限りません。無理に高い金額を積み立てると、月末に生活費が足りなくなり、結局は貯蓄を取り崩すことになります。

まず必要なのは、生活に支障が出ない少額から積み立てを始めることです。それと並行して、家計に見直せる支出が残っていないか、利用できる公的制度がないか、収入を増やす余地がないかを確認します。

収入はあるが、手元にあると使ってしまう

毎月の収入は一定以上あり、大きな固定費を抱えているわけでもないのに、給料日前になると口座残高がほとんど残っていないケースです。

この場合は、収入の少なさよりも、お金を使う順番に問題があるかもしれません。「生活費を使い、余った分を貯蓄しよう」と考えていると、使えるお金が口座に残っているため、予定外の買い物や外食に充てやすくなります。

このタイプの人には、家計簿を細かくつけることより、給料日に貯蓄分を先に別口座へ移す方法が向いています。最初から使える金額を減らしておけば、残った範囲で生活する習慣を作りやすくなります。

臨時支出のたびに貯蓄を取り崩してしまう

毎月は黒字でも、自動車税、固定資産税、旅行、家電の買い替え、冠婚葬祭、子どもの進学費用などが発生するたびに、貯蓄が元の金額に戻ってしまう家庭もあります。

これは必ずしも浪費が原因ではありません。毎月の生活費には含まれないものの、ある程度予測できる「特別費」を、家計に組み込んでいないことが主な原因です。

たとえば、年間の特別費が24万円であれば、毎月2万円を生活防衛資金とは別に積み立てます。あらかじめ使う予定のお金と、将来に残す貯蓄を分けることで、「貯めてもすぐになくなる」という状態を防ぎやすくなります。

目標や期限がなく「余ったら貯める」状態になっている

何のために貯蓄するのかが決まっていないと、手元のお金をすべて使えるお金だと考えやすくなります。老後資金、教育費、住宅購入資金などを漠然と意識していても、必要な時期や金額が分からなければ、今月いくら残すべきか判断できません。

ただし、最初から老後までの資金計画を完璧に作る必要はありません。まずは「急な出費に備えて10万円を貯める」「1年後までに30万円を用意する」など、比較的近い目標から始めてもよいでしょう。

目標が具体的になると、貯蓄は単なる我慢ではなく、将来必要なお金を先に確保する行動に変わります。

まず確認したい貯蓄できない原因のチェック項目

次の項目に当てはまるものがないか、確認してみてください。

  • 毎月の手取り収入と支出額を把握していない
  • 給料日前になると、ほとんどお金が残っていない
  • 余ったお金を貯蓄しようと考えている
  • 税金や家電の買い替えなど、年間の特別費を計算していない
  • 住宅費、保険料、通信費、車の維持費などの固定費が重い
  • 貯蓄の目的、必要額、期限が決まっていない
  • 高すぎる積立額を設定し、途中で取り崩している
  • 生活防衛資金がないまま投資を始めている
  • クレジットカードの利用額を請求日まで確認していない
  • 収入が増えると、その分だけ支出も増えている

複数に当てはまっても問題ありません。すべてを一度に解決しようとせず、最も家計への影響が大きい項目から対策していきましょう。

結論|貯蓄が苦手な人ほど意志ではなく仕組みで貯める

貯蓄を続けるために必要なのは、毎月買い物を我慢し続ける強い意思ではありません。使う前にお金を分け、普段の生活では貯蓄分を意識しなくても済む仕組みを作ることです。

給料日に先取りして、残ったお金で暮らす

貯蓄の基本は、次の順番です。

手取り収入-先取り貯蓄=使ってよい生活費

給料を受け取った後、月末に余った分を貯蓄するのではなく、給料日の直後に決めた金額を別口座へ移します。勤務先に財形貯蓄制度があれば給与からの天引きを利用する方法もありますし、銀行の自動積立定期預金や定額自動振込を設定してもよいでしょう。

自動化しておけば、「今月は出費が多そうだから、貯蓄は来月からにしよう」と判断する回数を減らせます。ただし、生活費が不足してカードローンやリボ払いを使うようでは逆効果です。最初は無理なく続けられる金額に設定しましょう。

最初から高い貯蓄率を目指さない

家計によって、適切な貯蓄額は異なります。収入の一定割合を貯蓄する考え方は目安になりますが、住宅費、子どもの人数、教育方針、働き方などによって余裕は変わります。

月3万円を目標にして毎月取り崩すより、月5,000円を確実に続けるほうが、貯蓄習慣を作るうえでは効果的です。月5,000円でも、利息を考慮しない単純計算で10年間続ければ60万円になります。

もちろん、10年間で物価が上昇する可能性や、途中で取り崩す可能性はあります。それでも、貯蓄をまったくしない状態と比べれば、急な出費に対応できる可能性は高まります。家計に余裕が出たときに、月5,000円から1万円、1万5,000円と段階的に増やせばよいのです。

貯蓄と投資は目的と使う時期で分ける

預貯金と投資は、どちらか一方だけを選ぶものではありません。目的と使う時期によって使い分けます。

病気、失業、家電の故障などに備える生活防衛資金や、数年以内に使う教育費、住宅購入の諸費用などは、必要なときに大きく減っていると困ります。そのため、基本的には預貯金で準備します。

一方、老後資金など長期間使う予定がないお金については、家計に余裕があり、価格変動を受け入れられるなら、積立投資を組み合わせる選択肢があります。ただし、投資には元本割れの可能性があります。生活防衛資金がない人は、投資を急ぐよりも、まず預貯金を確保することが基本です。

家計に余裕がない人が貯蓄を始める方法

すでに支出を見直しているにもかかわらず、家計にほとんど余裕がないときは、無理な節約を続けるべきではありません。それでも貯蓄がまったくない状態では、急な出費が発生したときに借入へ頼らざるを得なくなる可能性があります。

家計を壊さない範囲で、できることから始めましょう。

月1,000円や5,000円など無理のない金額から始める

最初の積立額は、「少なすぎるのでは」と感じる程度でも構いません。大切なのは、金額の大きさより、毎月積み立てても生活費が不足しないことです。

金融機関によっては、月1,000円以下の少額から積立預金を設定できます。まず月1,000円で3か月続け、問題がなければ3,000円、5,000円へ増やす方法もあります。

積立開始後に何度も取り崩している場合は、意思が弱いのではなく、設定額が現在の家計に合っていない可能性があります。金額を一時的に下げてでも、積立自体を続けるほうが習慣を維持しやすくなります。

自動積立定期預金や別口座への自動振込を利用する

家計に余裕がないと、毎月自分で振り込む方法は後回しになりがちです。そこで、給料日の当日か翌日に自動で積み立てる設定を利用します。

選択肢としては、銀行の自動積立定期預金、普通預金から貯蓄用口座への定額自動振込、勤務先の財形貯蓄などがあります。途中で使う可能性がある生活防衛資金については、引き出しやすい普通預金へ分ける方法も考えられます。

定期預金は簡単に使いにくいことが長所になる一方、急に必要になった場合の手続きや中途解約の条件を確認しておく必要があります。金利だけで選ばず、使う目的と引き出しやすさも考えましょう。

最初の目標は生活防衛資金にする

貯蓄がほとんどない人は、老後資金の投資より先に、突然の支出や収入減少に備えるお金を作ります。これが生活防衛資金です。

必要額は、働き方、家族構成、配偶者の収入、住宅ローンの有無などによって異なります。そのため、最初から大きな金額を目標にすると、達成までが遠く感じられるかもしれません。

まずは5万円、次に10万円、その後は生活費の1か月分というように、段階的に目標を引き上げる方法が現実的です。一定額を確保できたら、家庭の状況に応じて生活費の数か月分を目指します。

固定費は金額の大きいものから見直す

食費や日用品費を毎日細かく削るより、毎月自動的に引き落とされる固定費を見直したほうが、効果が長く続く場合があります。確認したいのは、住宅費、保険料、通信費、車の維持費、定額制サービスなどです。

ただし、単に安くすればよいわけではありません。たとえば、必要な保障まで保険を解約すると、病気や死亡などがあったときに家計へ大きな負担が生じます。住宅ローンの借り換えにも、手数料や登記費用などがかかります。

「金額が大きい」「利用頻度や必要性が低い」「変更しても生活への影響が小さい」という条件がそろう支出から見直しましょう。

変動費は満足度と支出額を比べて見直す

食費、交際費、被服費、趣味などの変動費は、すべてを一律に減らす必要はありません。使った金額に対して、どの程度の満足を得られたかを振り返ります。

家族との外食や大切な人との付き合いなど、自分にとって価値の高い支出を削りすぎると、家計管理そのものが苦しくなります。一方、利用していないサービス、習慣的なネットショッピング、なんとなく立ち寄るコンビニなど、支出額に対して満足度が低いものは見直しやすい部分です。

家計簿を細かく続けられない人は、過去1〜3か月分の銀行口座とクレジットカードの履歴を見るだけでも構いません。金額の大きい項目や、回数が多い支出を探すことから始めましょう。

年間の特別費を月割りで積み立てる

毎月の生活費とは別に、1年間に発生する支出を書き出します。税金、車検、家電、帰省、旅行、冠婚葬祭、誕生日、入学準備などです。

年間で必要になりそうな金額を合計し、12か月で割れば、毎月取り分ける金額が分かります。年間24万円なら月2万円、年間12万円なら月1万円です。

このお金は将来に残す貯蓄ではなく、使う予定のあるお金です。生活防衛資金や老後資金とは口座を分けると、本当に貯蓄が増えているのか判断しやすくなります。

削れる支出がなければ、収入を増やす方法を考える

支出を十分に見直している家庭では、これ以上の節約が生活の質や健康を損なう可能性があります。その場合は、支出削減だけにこだわらず、収入を増やす方法を検討します。

配偶者がいる場合は、家事や育児の分担を含めて、就労開始や勤務時間の延長が可能か話し合う方法があります。そのほか、勤務先の副業規定を確認したうえでの副業、資格や経験を生かしたクラウドソーシング、転職、不要品の売却なども選択肢です。

ただし、副業や勤務時間の変更によって、税金、社会保険料、保育料などが変わることがあります。得られる収入だけでなく、増える費用や使える時間も含めて判断しましょう。また、家計が苦しい原因が一時的な収入減少や病気、子育てなどにある場合は、公的給付や勤務先の支援制度を利用できないか確認することも大切です。

お金があると使ってしまう人の貯蓄方法

収入の範囲内で生活できていても、口座にあるお金を毎月使い切ってしまえば、将来の備えは増えません。このタイプの人は、細かな節約を増やすより、お金が目に入る場所と使う順番を変えることが有効です。

生活口座と貯蓄口座を分ける

給料を受け取り、家賃やカード代を支払い、貯蓄も管理する口座が一つだけだと、口座残高のうち、いくらまで使ってよいのか分かりにくくなります。

そこで、日常の支払いに使う生活口座と、原則として使わない貯蓄口座を分けます。さらに管理できる人は、税金や旅行などの特別費を置く口座も分けるとよいでしょう。

ただし、口座を増やしすぎると管理が複雑になります。最初は「使う口座」と「残す口座」の2つで十分です。

給料日の直後に自動でお金を移す

貯蓄口座への振り替えは、給料日の当日か翌日に設定します。月末に設定すると、その前に使ってしまう可能性があるためです。

最初の金額は、過去数か月の収支を見て、無理なく残せそうな範囲にします。たとえば、毎月2万円程度余るにもかかわらず使ってしまうのであれば、まず1万円を自動で移し、残り1万円は家計の予備として残す方法があります。

3か月程度続けて生活費に問題がなければ、積立額を増やします。最初から限界まで先取りするより、家計に合わせて少しずつ調整するほうが継続しやすくなります。

使ってよい金額を先に決める

交際費や趣味などを完全に禁止すると、反動で大きく使ってしまうことがあります。そこで、何に使ってはいけないかを細かく決めるのではなく、1か月に自由に使ってよい金額を先に決めます。

自由費の範囲内であれば、使い道を細かく反省する必要はありません。一方、上限を超えそうな場合は、翌月分を前借りせず、優先順位を考えます。貯蓄を続けながら楽しみに使えるお金も残すことが、長期的な家計管理につながります。

クレジットカードやキャッシュレス決済の履歴を確認する

キャッシュレス決済は便利ですが、お金を支払った感覚が薄れやすく、複数のサービスを使うと支出の総額を把握しにくくなります。

カードを使わないようにする必要はありませんが、決済手段をできるだけ集約し、少なくとも週に1回は利用履歴を確認しましょう。利用通知を設定して、決済のたびに金額が表示されるようにする方法もあります。

ポイントを貯めるために不要な買い物をすれば、家計全体では支出が増えます。還元率よりも、予定していた支出かどうかを優先して判断することが大切です。

ボーナスは入金前に使い道を分ける

ボーナスが振り込まれてから使い道を考えると、口座残高が増えた安心感から支出も大きくなりがちです。入金前に、貯蓄、特別費、自由に使うお金へ分けておきましょう。

ただし、毎月の生活費がボーナスを前提にしないと成り立たない場合は、家計の固定費が収入に対して重すぎる可能性があります。ボーナスは勤務先の業績などによって減ることもあるため、原則として毎月の収入で基本的な生活費を賄える状態が望ましいといえます。

貯蓄口座をすぐに取り崩さない仕組みを作る

貯蓄口座を生活口座と同じアプリの目立つ位置に置いていると、残高が頻繁に目に入り、「まだ使える」と感じることがあります。あえて普段使わない金融機関に分けるなど、少し手間をかけなければ引き出せない状態を作るのも一つの方法です。

ただし、生活防衛資金まで引き出せない商品に入れると、緊急時に困ります。簡単には使わないものの、必要なときには現金化できる場所を選びましょう。

ここまでの対策で預貯金を確保する仕組みを作った後、家計に余裕があれば、新NISAなどを利用した積立投資を組み合わせる選択肢も出てきます。ただし、貯蓄と投資は同じものではありません。後半では、積立投資やポイント投資を始める判断基準、将来必要な金額から毎月の積立額を計算する方法、初心者が陥りやすい失敗について詳しく説明します。

貯蓄が苦手な人は積立投資を始めてもよい?

貯蓄を始めようと考えたとき、新NISAや投資信託に関心を持つ人もいるでしょう。預貯金の金利だけではお金が増えにくいため、少額でも投資に回したほうがよいのではないかと考えるのは自然なことです。

ただし、積立投資は預貯金の代わりではありません。預貯金と投資にはそれぞれ異なる役割があり、使う時期や目的に合わせて選ぶ必要があります。

預貯金と積立投資の違い

預貯金は、病気や失業、家電の故障など、必要なときに使えるお金を確保するのに向いています。一方、投資信託などを使った積立投資は、当面使う予定のないお金を長期的に運用する方法です。

比較項目預貯金積立投資
主な目的緊急時や近い将来の支出に備える長期的な資産形成を目指す
元本の値動き預金保険制度の対象範囲内では安全性が高い市場環境によって元本割れする可能性がある
向いているお金生活防衛資金、特別費、数年以内に使うお金長期間使う予定のない余裕資金
必要なときの使いやすさ比較的引き出しやすい売却後の受け取りに時間がかかり、価格も変動する
主な注意点物価上昇により実質的な価値が下がる可能性がある損失が発生する可能性があり、収益は保証されない

「預貯金は増えにくいから、すべて投資に回したほうがよい」という考え方は適切ではありません。反対に、値下がりが怖いからすべてを普通預金に置くことが、長期の資産形成において常に最善とも限りません。

必要なときに使えるお金を預貯金で確保したうえで、長期間使わない資金について投資を検討するのが基本です。

生活防衛資金がないうちは預貯金を優先する

貯蓄がほとんどない状態で積立投資を始めると、急な支出が発生したときに、値下がりしている投資信託を売却しなければならない可能性があります。

たとえば、投資を始めた直後に相場が下落し、同じ時期に収入が減ったとします。預貯金がなければ、損失を抱えた状態で投資商品を売却し、生活費に充てることになりかねません。クレジットカードのリボ払いやカードローンに頼れば、投資で期待する収益より高い利息を負担する可能性もあります。

そのため、家計に余裕がない人は、まず預貯金による生活防衛資金を優先します。十分な金額は家庭によって異なりますが、最初から数か月分を一度に用意する必要はありません。まず5万円、次に10万円、生活費1か月分というように段階的に増やします。

一定の預貯金を確保できた後は、毎月の積立額の一部を投資に振り分ける方法も考えられます。誰にでも同じ配分が適しているわけではなく、収入の安定性、扶養家族の有無、住宅ローン、近い将来の支出などを踏まえて判断することが大切です。

新NISAのつみたて投資枠を利用する場合の考え方

2024年から始まった新NISAには「つみたて投資枠」があります。一定の条件を満たした投資信託などを積み立て、その運用益や売却益が非課税になる制度です。非課税保有期間は無期限ですが、NISAを利用しても投資商品の値下がりを防げるわけではありません。

年間投資枠を使い切ることを目標にする必要もありません。制度上の上限と、自分の家計から無理なく投資できる金額は別のものです。生活費が不足したり、近いうちに必要な教育費まで投資したりしては、非課税制度を利用するメリットを十分に生かせない可能性があります。

新NISAで積立投資を始める場合も、目的、運用できる期間、価格が下がったときにどの程度耐えられるかを確認します。長期間使う予定がなく、一時的な下落があっても積み立てを継続できる資金で行うことが基本です。

積立投資は高い収益が保証される方法ではない

既存記事では、積立投資は積立預金より高い利回りを期待できる方法として紹介していました。株式などを含む投資信託は、預貯金より高い収益を期待できる一方、実際の結果は投資対象や運用期間、市場環境によって変わります。

積み立てをすれば元本割れしないわけではなく、価格が高い時期に始めた後、長期間低迷することもあります。また、投資信託には運用管理費用である信託報酬などのコストがかかります。

積立投資の役割は、短期間で貯蓄を増やすことではありません。購入時期を分けながら、長期間にわたって資産形成を続けることです。数年以内に使う可能性がある資金は、期待収益だけで判断せず、預貯金で持つことも必要です。

貯蓄と投資を併用するときの考え方

預貯金と投資の割合は、年齢だけで一律に決められません。次の条件を確認して判断します。

  • 生活防衛資金を確保できているか
  • 数年以内に予定している大きな支出があるか
  • 収入は安定しているか
  • 投資した資金を長期間使わずに済むか
  • 評価額が下落しても積み立てを続けられるか
  • 住宅ローンなどの借入負担が重すぎないか

たとえば、毎月1万円を積み立てられる場合でも、貯蓄がほとんどなければ、まず1万円を預貯金へ回す判断が考えられます。生活防衛資金が一定額に達した後、預貯金5,000円、積立投資5,000円に分ける方法もあります。

これはあくまで考え方の一例です。近いうちに教育費や住宅購入費が必要な家庭では、預貯金の割合を高くするほうが安心です。一方、当面大きな支出がなく、十分な預貯金がある家庭では、積立投資の割合を高める余地があります。

ポイント投資は貯蓄が苦手な人にも向いている?

買い物などで貯まったポイントを使って、投資信託や株式などを購入できるサービスがあります。代表的なものとして、楽天ポイント、Vポイント、Pontaポイント、dポイントなどを利用したポイント投資が挙げられます。

対応するポイント、対象商品、最低利用単位などは金融機関によって異なります。また、サービス内容は変更されることがあるため、利用時には各金融機関の公式サイトを確認してください。

現金を使わずに投資を体験しやすい

ポイント投資のメリットは、家計から新たに現金を持ち出さずに、投資商品の値動きを体験できることです。投資に興味はあるものの、現金を投じることに不安がある人にとって、少額で仕組みを学ぶ入口になります。

実際に投資信託などを保有すると、価格が上がることもあれば、下がることもあります。少額で値動きを経験することで、自分がどの程度の下落まで受け入れられるかを知る機会にもなるでしょう。

ポイントにも経済的な価値がある

現金を使わないからといって、実質的な負担がまったくないわけではありません。ポイントは買い物やサービスの支払いにも利用できるため、経済的な価値を持っています。

投資に使ったポイントが値下がりすれば、買い物に使った場合と比べて価値が減る可能性があります。現金ではないから損をしても問題ないと考えず、投資であることを理解したうえで利用しましょう。

また、ポイントを貯めるために不要な買い物を増やしては本末転倒です。ポイント還元を家計改善の中心にするのではなく、予定していた支出によって自然に貯まったポイントを活用する程度に考えるのが無難です。

ポイント投資だけでは十分な備えになりにくい

ポイント投資で少しずつ資産を増やせる可能性はありますが、生活防衛資金や老後資金をポイントだけで準備できるとは限りません。毎月受け取れるポイント数が少なければ、積み立てられる金額にも限界があります。

ポイント投資は、預貯金や毎月の積み立てをしなくてもよい方法ではありません。投資を経験する入口や、余っているポイントの活用方法として位置づけ、生活防衛資金は現金で準備することが基本です。

将来必要なお金から毎月の貯蓄額を決める

貯蓄を続けるには、「できるだけ多く貯める」と考えるより、目的と期限から毎月の積立額を逆算するほうが分かりやすくなります。

目的・必要額・期限を決める

まず、何のために、いつまでに、いくら必要なのかを整理します。たとえば、3年後に予定している自動車の買い替え資金として120万円を用意したいとします。現在、この目的に使える貯蓄が30万円ある場合、残りは90万円です。

90万円を36か月で割ると、毎月必要な積立額は2万5,000円になります。

(必要額120万円-現在の貯蓄30万円)÷36か月=毎月2万5,000円

このように計算すると、毎月いくら残す必要があるのかが具体的になります。

計算結果が現実的でない場合は条件を調整する

逆算した積立額が家計から出せないこともあります。その場合に、生活費を無理に削って合わせる必要はありません。

次のような調整方法を考えます。

  • 目標達成までの期間を延ばす
  • 購入するものや計画の予算を下げる
  • ボーナスから無理のない範囲で補う
  • 満足度の低い支出を見直す
  • 収入を増やす方法を検討する
  • 優先順位の低い目標をいったん後回しにする

教育費、住宅資金、老後資金など複数の目標がある場合は、必要になる時期と重要度によって優先順位をつけます。すべての目標に同じ金額を積み立てるのではなく、期限が近く、家計への影響が大きいものから準備しましょう。

老後資金は公的年金の見込額も確認する

老後資金を考える際に、「一律で2,000万円必要」と決めつけることはできません。必要額は、老後の生活費、公的年金の見込額、退職金、住居費、働く期間などによって変わります。

公的年金以外にも、企業年金、個人年金、就労収入、運用資産などがある人もいます。まずは「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で公的年金の見込額を確認し、希望する生活費との差額を計算します。

将来の金額には不確実性があるため、一度計算して終わりではありません。収入、家族構成、住宅購入、退職予定などが変わったときに見直すことが大切です。

FP相談で想定される事例|子育て中で月5,000円しか貯められない家庭

たとえば、共働きの夫婦と小学生の子どもがいる家庭で、食費や教育費が増え、毎月5,000円程度しか貯蓄に回せないケースを考えてみましょう。夫婦は「月5,000円では意味がない」と感じ、積み立てを始められずにいます。

家計を確認すると、住宅費や保険料などには大きな無駄がなく、数年後には習い事や進学に伴う支出の増加も予想されます。この状態で、無理に月3万円の積み立てを始めても、生活費が不足して取り崩す可能性が高いでしょう。

まずは給料日に5,000円を生活防衛資金として別口座へ移します。同時に、税金、帰省、学校行事などの年間特別費を計算し、通常の貯蓄とは別に管理します。児童手当なども、すべてを貯めると決めつけず、現在の教育費と将来の教育資金の配分を家計全体で考えます。

その後、昇給や子育て費用の変化によって余裕が生まれた段階で、積立額を増やします。十分な生活防衛資金ができた後は、一部を長期の積立投資に回す選択肢もあります。

この事例で大切なのは、月5,000円という金額の小ささではありません。現在の家計を赤字にせず、将来の増額につながる仕組みを作ることです。

貯蓄が苦手な人が陥りやすい失敗

いきなり高い積立額を設定する

貯蓄を思い立った直後は意欲が高く、無理な金額を設定しがちです。しかし、生活費が足りず毎月取り崩していては、貯蓄への苦手意識が強くなります。

最初は確実に続けられる金額にし、3か月ごとなど定期的に増額できるか確認しましょう。

生活防衛資金がないまま投資を優先する

投資の期待収益だけに注目し、手元の現金をほとんど残さないのも失敗例です。相場が下落しているときに急な支出が発生すると、望まないタイミングで売却することになります。

新NISAを利用していても、元本割れの可能性はあります。非課税制度と投資商品の安全性は分けて考えましょう。

貯蓄のために必要な支出まで削る

保険料、医療費、食費、子どもの教育費などを削れば、一時的に貯蓄額が増えるかもしれません。しかし、必要な保障や健康を損なえば、将来さらに大きな支出につながる可能性があります。

金額だけでなく、その支出が家計や生活にどのような役割を果たしているかを確認することが必要です。

ポイントやクレカ還元を目的に支出を増やす

高い還元率を得るために買い物を増やしたり、年会費の高いカードを契約したりすると、受け取るポイント以上に支出が増える場合があります。

ポイントは、予定していた支出の結果として受け取るものです。貯蓄のために消費を増やすという逆転が起きないよう注意しましょう。

年間の特別費を忘れてしまう

毎月の黒字分をすべて貯蓄や投資へ回すと、税金や家電の買い替えが発生したときに取り崩すことになります。

将来使うことが分かっているお金は、最初から特別費として分けます。これにより、実際に将来へ残せている金額を正しく把握できます。

一度できなかっただけで積み立てをやめる

冠婚葬祭や収入減少などによって、積み立てられない月が出ることもあります。そのようなときに、計画が失敗したと考える必要はありません。

積立額を一時的に下げる、数か月休止するなど、家計に合わせて調整し、再開できる状態を残しておきましょう。貯蓄は毎月完璧に続けることより、長期間やめないことが大切です。

今日から貯蓄を始めるための5つの手順

貯蓄が苦手な人は、次の順番で準備すると行動に移しやすくなります。

  1. 直近1〜3か月の収入と支出を確認する
    銀行口座とクレジットカードの履歴を見て、毎月いくら残っているかを確認します。
  2. 貯蓄できない原因を特定する
    収入不足、固定費の負担、使いすぎ、特別費の見落としなど、影響の大きい原因を探します。
  3. 最初の目的と目標額を決める
    貯蓄がほとんどなければ、まず5万円や10万円など、達成を確認しやすい生活防衛資金から始めます。
  4. 給料日に少額を自動で移す
    自動積立定期預金や別口座への自動振込を利用し、使う前にお金を分けます。
  5. 3か月後に積立額を見直す
    生活に支障がなければ増額し、毎月取り崩しているなら減額します。家計に合う金額を探しながら続けましょう。

まとめ|小さく始めて、家計に合わせて積立額を育てる

貯蓄が苦手でも、最初から大きな金額を用意する必要はありません。家計に余裕がない人は、月1,000円や5,000円などの少額から始め、生活防衛資金を優先します。すでに支出を見直して削る余地がない場合は、無理な節約ではなく、働き方や副業、公的制度なども含めて収入面を確認しましょう。

収入があっても使ってしまう人には、生活口座と貯蓄口座を分け、給料日の直後に自動で移す先取り貯蓄が向いています。自由に使える金額も確保し、我慢だけに頼らない仕組みにすることが長続きのポイントです。

積立投資やポイント投資は、資産形成や投資を経験する方法として活用できます。ただし、預貯金とは役割が異なり、元本割れの可能性があります。生活防衛資金や近いうちに使うお金は預貯金で準備し、長期間使わない余裕資金で投資を検討することが基本です。

月5,000円の積み立てでも、10年間続ければ単純計算で60万円になります。少額だから意味がないと考えず、まずは家計を崩さずに続けられる金額から始めてください。収入や支出が変わったときに積立額を見直し、少しずつ貯蓄を育てていくことが、無理のない資産形成につながります。

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