住宅ローンは固定金利と変動金利どっち?後悔しない選び方をFPが解説

住宅ローンを検討するとき、多くの人が悩むのが「固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきか」という問題です。変動金利の低さを見ると魅力的に感じる一方、将来の金利上昇を考えると、固定金利のほうが安心なのではないかと迷う人も多いでしょう。

しかし、固定金利と変動金利のどちらが有利になるかは、完済するまで分かりません。今後の金利がどのように動くかに加え、返済期間、繰り上げ返済の有無、借入額などによって結果が変わるからです。

そのため、住宅ローンの金利タイプは「どちらが得になりそうか」だけで決めるべきではありません。大切なのは、金利が上昇したときに家計がどこまで耐えられるか、返済額を確定させることにどれだけ価値を感じるかという視点です。

結論を先に示すと、金利上昇によって返済額が増えると、教育費や老後資金の準備が難しくなる世帯には固定金利が向いています。一方、借入額を抑えられており、収入や貯蓄にも余裕があり、金利上昇を家計で吸収できる世帯なら、変動金利を選ぶ合理性があります。

この記事では、固定金利と変動金利の違いやメリット・デメリット、2026年時点の金利環境を踏まえ、後悔しにくい住宅ローンの選び方を独立系FPの視点から解説します。

目次

住宅ローンは固定金利と変動金利のどちらがいい?

固定金利と変動金利のどちらがよいかは、将来の金利を予測するだけでは決められません。金利が同じように動いたとしても、家族構成や収入、貯蓄、今後の支出によって家計への影響が異なるためです。

たとえば、借入額が同じ4,000万円でも、毎月10万円以上貯蓄できる世帯と、住宅ローンを返済するとほとんど余裕が残らない世帯では、金利上昇に対する耐久力が違います。前者は変動金利の返済額が増えても家計で吸収できる可能性がありますが、後者はわずかな負担増でも教育費や貯蓄を削らなければならないかもしれません。

したがって、「一般的にどちらが得か」ではなく、「自分の家計ならどちらを無理なく続けられるか」を基準に考える必要があります。

最初の金利なら変動、返済額の確実性なら全期間固定

一般的に、借入時の適用金利は全期間固定金利より変動金利のほうが低く設定されています。同じ金額を借りるのであれば、当初の毎月返済額も変動金利のほうが少なくなりやすいでしょう。

ただし、変動金利の低さが完済まで続く保証はありません。市場金利の変化を受けて適用金利が上がれば、利息負担も増加します。借入時の返済額が少ないことと、完済までの総返済額が少ないことは別の話です。

全期間固定金利は、変動金利より高い金利でスタートすることが一般的です。その代わり、借入時点で完済までの金利と返済額が確定します。将来、市場金利が上がっても契約した金利は変わりません。

固定金利と変動金利の違いは、単純な「高い・安い」ではなく、金利変動のリスクを誰が引き受けるかという違いです。全期間固定金利は金利上昇リスクを避けるためのコストを当初から負担し、変動金利は当初の負担を抑える代わりに、将来の金利上昇リスクを借り手が引き受けます。

結論は「金利予測」ではなく「家計の耐久力」で決める

住宅ローン選びで陥りやすいのが、「これから金利が上がるなら固定、上がらないなら変動」と考えることです。しかし、金利は景気、物価、賃金、金融政策、海外経済など多くの要因によって動きます。専門家であっても、20年後や30年後の金利を正確に予測することはできません。

必要なのは予測を当てることではなく、予測が外れても生活を守れる設計です。変動金利を選ぶなら、金利が想定以上に上昇しても返済を続けられるかを確認します。固定金利を選ぶなら、当初から高くなる返済額を無理なく支払いながら、教育費や老後資金も準備できるかを検討します。

固定金利と変動金利の主な違いを整理すると、次のようになります。

比較項目全期間固定金利変動金利
借入時の金利比較的高い傾向比較的低い傾向
完済までの金利変わらない定期的に見直される
毎月返済額原則として確定将来増える可能性がある
総返済額借入時に見通しやすい完済するまで確定しない
金利上昇の影響受けない利息負担が増える
金利低下の恩恵原則として受けない適用金利が下がる可能性がある
向いている家計返済額の安定を重視する家計金利上昇を吸収できる家計

実際には、事務手数料、保証料、団体信用生命保険の保障内容、繰り上げ返済の条件なども金融機関によって異なります。金利だけを抜き出して比較するのではなく、ローン全体の条件を確認することが大切です。

住宅ローンの固定金利・変動金利・固定期間選択型の違い

住宅ローンの金利タイプは、全期間固定金利と変動金利だけではありません。一定期間だけ金利を固定する「固定期間選択型」もあります。特に、「固定金利」という言葉が全期間固定と固定期間選択型の両方に使われることがあるため、違いを理解しておきましょう。

全期間固定金利型とは

全期間固定金利型は、借入時に決まった金利が完済まで変わらない住宅ローンです。市場金利が上昇しても適用金利や毎月返済額は変わらないため、長期的な返済計画を立てやすいことが特徴です。

住宅ローンは20年から35年程度にわたって返済するケースが多く、その間には子どもの進学、転職、独立、定年など、さまざまな変化が起こります。住宅費を確定できれば、教育費や老後資金など、ほかの支出計画も立てやすくなります。

全期間固定金利型の代表的な選択肢には、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供するフラット35があります。ただし、フラット35の適用金利や金利引き下げ制度は、借入期間、融資率、住宅性能、家族構成などによって異なります。金利も毎月変わるため、申込時ではなく、実際に適用される時点の条件を確認する必要があります。

変動金利型とは

変動金利型は、市場金利の動向などに応じて適用金利が見直される住宅ローンです。金融機関によって詳細は異なりますが、一般的には半年ごとに金利が見直されます。

変動金利には「金利の見直し」と「毎月返済額の見直し」という二つの仕組みがあります。元利均等返済では、適用金利が上がっても毎月返済額を5年間変えない「5年ルール」や、返済額を見直す際も直前の125%を上限とする「125%ルール」を採用している金融機関があります。

ただし、これらのルールはすべての住宅ローンに適用されるものではありません。ネット銀行などでは採用していない商品もあり、元金均等返済では取扱いが異なる場合もあります。契約前に金融機関の商品説明書を確認する必要があります。

また、5年ルールによって毎月返済額が据え置かれても、金利上昇の影響がなくなるわけではありません。返済額のうち利息が占める割合が増え、その分だけ元金の減りが遅くなる可能性があります。125%ルールも返済額の急増を抑える仕組みであり、増えた利息を免除する制度ではありません。

「返済額がすぐには変わらないから安心」と考えるのではなく、残高がどのように減るのか、未払利息が発生した場合にどう扱われるのかまで確認することが大切です。

固定期間選択型とは

固定期間選択型は、借入当初の3年、5年、10年など、一定期間だけ金利を固定する住宅ローンです。固定期間中は金利と返済額が変わりませんが、その期間が終了すると、変動金利へ移行するか、再び一定期間の固定金利を選ぶことになります。

全期間固定金利より当初金利が低く設定されることもあり、教育費のピークが終わるまでなど、特定の期間だけ返済額を安定させたい世帯には選択肢となります。

一方、固定期間終了後に適用される金利は、借入時点では確定していません。固定期間が終わる時点で市場金利が上昇していれば、毎月返済額が大きく増える可能性があります。また、当初と固定期間終了後で金利の優遇幅が異なる商品や、再固定時に手数料がかかる商品もあります。

したがって、「固定」という名称だけで完済まで返済額が変わらないと思わず、固定される期間と終了後の条件を確認しなければなりません。

固定金利のメリット・デメリット

固定金利の最大のメリットは、将来の金利上昇によって返済額が増えないことです。しかし、安心感だけで選ぶのではなく、そのために支払うコストを含めて判断する必要があります。

完済まで返済計画を立てやすい

全期間固定金利を選べば、借入時点で毎月返済額と総返済額の見通しが立ちます。市場金利の変化を気にする必要がなく、返済期間中の住居費を家計に組み込みやすくなります。

住宅ローンの返済中に金利上昇のニュースが出ても、返済計画を変更する必要はありません。相場や金利の動きに不安を感じやすい人にとっては、精神的な負担を抑えられることもメリットです。

教育費や老後資金との両立を考えやすい

子育て世帯では、住宅ローン返済中に高校や大学の進学時期を迎えることがあります。この時期に住宅ローンの負担まで増えると、教育資金の取り崩しや新NISAなどの積立停止が必要になるかもしれません。

返済額を固定しておけば、将来の住宅費が分かるため、教育費や老後資金にいくら回せるかを計算しやすくなります。特に、住宅購入後の家計にあまり余裕がない場合、支出が確定していること自体がリスク対策になります。

借入時の金利は変動金利より高い傾向がある

固定金利のデメリットは、一般に変動金利より高い金利から返済が始まることです。そのため、同じ借入額と返済期間で比較すると、当初の毎月返済額は固定金利のほうが多くなりやすく、借入可能額も少なくなる場合があります。

ただし、返済額を抑えるために変動金利を選び、借入額を増やすのは慎重に考える必要があります。金利が上昇したときに返済が苦しくなるようであれば、金利タイプの問題だけでなく、住宅価格や借入額そのものが家計に対して大きすぎる可能性があります。

市場金利が上がらなければ負担が大きく見えることもある

全期間固定金利を選んだ後も低金利が続けば、結果として変動金利より多くの利息を支払う可能性があります。また、市場金利が下がっても、契約中の固定金利は自動的には下がりません。低い金利へ変更するには、借り換えなどを検討する必要があり、審査や諸費用も発生します。

固定金利で支払う金利差は、単なる損失とは限りません。将来の返済額を確定させ、金利上昇リスクを避けるための費用という見方もできます。その安心にどれだけ価値を感じるかは、家計の余裕や本人の考え方によって異なります。

変動金利のメリット・デメリット

変動金利は、借入時の負担を抑えやすい点が魅力です。ただし、低い適用金利だけを見て選ぶと、将来の負担増に対応できないことがあります。

借入当初の返済額を抑えやすい

変動金利は全期間固定金利より当初金利が低い傾向があり、毎月返済額を抑えやすくなります。住宅購入直後は、引っ越し、家具・家電、固定資産税、修繕、出産や育児などの支出が重なることもあるため、当初の返済負担が軽いことは家計上のメリットです。

ただし、返済額が少なくなった分をすべて生活水準の引き上げに使うと、金利が上昇したときに対応できません。固定金利を選んだ場合との差額を貯蓄や資産形成に回し、将来の返済負担増に備えることが、変動金利を活かす基本的な考え方です。

借入初期に低金利の恩恵を受けやすい

住宅ローンは、借入残高が多い時期ほど金利の影響を大きく受けます。借入初期の金利が低ければ、その期間の利息を抑え、元金の返済を進めやすくなります。

特に、借入額が家計に対して小さい人、数年後にまとまった資金で一部返済できる人、返済期間を短めに設定している人は、低金利の恩恵を受けやすいでしょう。ただし、繰り上げ返済に使う資金まで最初から住宅購入に投入すると、急な支出に対応できなくなります。手元資金を残すことが前提です。

金利上昇によって利息と返済負担が増える

変動金利の最大のデメリットは、完済までの返済額が確定しないことです。適用金利が上昇すれば利息負担が増え、毎月返済額も将来的に増える可能性があります。

さらに、金利上昇が家計に影響する時期は選べません。子どもの大学進学、育児による収入減少、住宅の修繕、親の介護などと重なることもあります。今の家計に余裕があるだけでなく、将来支出が増える時期にも耐えられるかを確認しなければなりません。

広告上の最優遇金利が誰にでも適用されるとは限らない

金融機関の広告では、非常に低い変動金利が大きく表示されることがあります。しかし、それがすべての申込者に適用されるとは限りません。

実際の適用金利は、審査結果、自己資金、物件、勤務状況、借入額、金融機関との取引条件などによって変わることがあります。また、基準金利からどれだけ引き下げるかを示す「優遇幅」が完済まで続くのか、条件を満たさなくなったときにどうなるのかも確認が必要です。

金融機関を比較するときは、当初の適用金利だけでなく、事務手数料、保証料、団信の上乗せ金利、繰り上げ返済手数料、金利変更時のルールまで含めて判断しましょう。

2026年の金利環境をどう考えるべきか

日本では長い間、低金利の状態が続きました。そのため、過去の実績だけを見れば、変動金利を選んだ人が低金利の恩恵を受けられた期間は長かったといえます。

一方、2026年8月時点では、日本銀行の金融政策も過去の超低金利期から変化しており、住宅ローンについても金利が動く可能性を前提に考える必要があります。変動金利の基準となる金利だけでなく、全期間固定金利に影響する長期金利も変動しています。

ここで注意したいのは、「金利が上がりそうだから必ず固定を選ぶべき」という意味ではないことです。すでに固定金利が将来の金利上昇をある程度織り込んでいれば、変動金利との当初の差は大きくなります。その後の金利上昇が小さければ、変動金利のほうが総返済額を抑えられる可能性もあります。

反対に、過去に変動金利が有利だったからといって、今後も同じ結果になる保証はありません。過去の実績をそのまま将来に当てはめず、金利上昇が起きても返済を続けられる設計にすることが大切です。

固定金利が向いている人

固定金利が向いているのは、単に慎重な人だけではありません。家計の余力が小さく、将来の負担増を避ける必要性が高い人にとって、返済額を確定させることには大きな意味があります。

具体的には、次のような人が固定金利を検討しやすいでしょう。

  • 金利上昇で毎月返済額が増えると家計が厳しくなる人
  • 今後、教育費や介護費などの大きな支出が見込まれる人
  • 借入額が大きく、返済期間も長い人
  • 片働き世帯など、収入の増加を見込みにくい人
  • 住宅費を確定させて新NISAや老後資金の積立を続けたい人
  • 金利の動向を気にせず生活したい人

固定金利を選んだ結果、毎月返済額が高くなり、貯蓄できなくなるのであれば、必ずしも安全とはいえません。その場合は変動金利に変更して借入額を維持するのではなく、購入する住宅の予算を下げることも検討すべきです。

変動金利が向いている人

変動金利が向いているのは、金利が上がらないと考える人ではなく、上がっても対応できる人です。金利上昇リスクを理解し、家計の中で管理できることが前提になります。

具体的には、次のような条件が考えられます。

  • 住宅ローン返済後も毎月十分な余剰資金が残る人
  • 生活防衛資金と将来使う教育費などを別に確保している人
  • 借入額が年収や資産に対して抑えられている人
  • 金利が1%、2%上昇した場合でも返済を続けられる人
  • 繰り上げ返済や借入期間の短縮を選べる人
  • 定年時の残債を返済できる資産形成計画がある人

注意したいのは、「将来、繰り上げ返済をしなければ家計が成り立たない人」と「必要に応じて繰り上げ返済を選べる人」は異なることです。前者は金利上昇に対応するための資金を必ず用意しなければならず、家計の自由度が高いとはいえません。

変動金利を選ぶなら、固定金利との差額を消費に回すのではなく、預貯金や資産形成に回し、金利上昇時の選択肢を残しておくことが重要です。

固定か変動かを決める5つの判断手順

固定金利と変動金利で迷ったときは、金利の数字だけを比べるのではなく、次の順番で家計を確認します。

手順1:借りられる額ではなく無理なく返せる額を決める

金融機関の審査に通る借入額と、生活を維持しながら返せる借入額は同じではありません。住宅ローンを返済した後も、固定資産税、管理費、修繕費、教育費、老後資金などを準備できる金額に抑えます。

ボーナスや残業代を返済の前提にしすぎず、収入が一時的に減った場合も考えておきましょう。共働き世帯も、二人の収入が完済まで同じように続くとは限りません。

手順2:金利が1%・2%上がった場合を試算する

変動金利を選ぶ場合は、現在の返済額だけでなく、適用金利が1%、さらに2%上昇した場合も試算します。その返済額を支払いながら毎月の貯蓄を続けられるか、赤字にならないかを確認してください。

5年ルールがある場合も、実際に返済額へ反映される時期が遅れるだけで、利息増加の影響がなくなるわけではありません。毎月返済額と元金残高の両方を見る必要があります。

手順3:教育費・収入減少・修繕費と重ねて考える

金利上昇だけを切り離して考えると、家計への影響を過小評価しやすくなります。子どもの大学進学、育児休業や時短勤務、転職、親の介護、住宅設備の交換など、支出増加や収入減少と重なった場合も確認します。

住宅金融支援機構の情報でも、教育費が増える時期には、その期間の金利変動リスクを避ける考え方が示されています。家計に余裕がなくなる時期が分かっているなら、その時期の返済額を確定させることには合理性があります。

手順4:生活防衛資金を残せるか確認する

頭金を多く入れたり、早期に繰り上げ返済したりすれば、住宅ローンの残高と利息を減らせます。しかし、手元資金を使いすぎると、病気、失業、修繕などが発生したときに対応できません。

住宅購入後も、少なくとも当面の生活費と近い将来に必要な資金は現金で確保します。繰り上げ返済は、家計に余裕があるときに選べる手段として残しておくのが基本です。

手順5:定年時の残債と完済方法を確認する

毎月返済額が無理のない範囲でも、定年後まで多額の住宅ローンが残る設計には注意が必要です。年金生活に入ると収入が減り、医療費や介護費が増える可能性もあります。

基本的には定年までの完済を目標とし、返済期間が定年後まで続く場合は、定年時の残債を試算しておきます。その残債を預貯金や運用資産から返済するのか、退職後も返済を続けるのかまで決めておくことが大切です。

最終的な判断は、次のように整理できます。

  • 返済額が増えると教育費や貯蓄に支障が出るなら、固定金利を優先する
  • 金利上昇後も家計に余裕があり、返済方法を複数選べるなら、変動金利を検討する
  • どちらを選んでも余裕がないなら、金利タイプではなく借入額を見直す

住宅ローンで最も避けたいのは、金利タイプの選択を間違えること以上に、金利が少し動いただけで生活が成り立たなくなるほど借りることです。固定か変動かを決める前に、家計に合った住宅予算になっているかを確認することが、後悔しにくい住宅ローン選びの土台になります。

金利が上がると住宅ローンの返済額はいくら増える?

変動金利を選ぶときは、「金利が上がる可能性がある」と理解するだけでは不十分です。実際に金利が上がった場合、毎月返済額がいくら増えるのかを数字で確認する必要があります。

たとえば、4,000万円を35年間、元利均等返済、ボーナス返済なしで借り、同じ金利が完済まで続くと仮定すると、毎月返済額の概算は次のようになります。

適用金利毎月返済額の概算年間返済額の概算金利0.8%との差
年0.8%約10万9,000円約131万円
年1.8%約12万8,000円約154万円毎月約1万9,000円増
年2.8%約15万円約180万円毎月約4万1,000円増

※借入額4,000万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしで試算した概算です。実際の変動金利では、金利が変わる時期、残りの返済期間、元金残高、5年ルールなどによって返済額が異なります。

金利が0.8%から1.8%に上がると、毎月返済額は約1万9,000円増える計算です。年間では約23万円の負担増になります。2.8%まで上がれば、当初との差は毎月約4万1,000円、年間では約49万円です。

この増加額を「何とか支払える」と考えるだけではなく、支払った後も教育費や老後資金を準備できるかを確認してください。住宅ローンの返済だけを続けられても、必要な貯蓄を取り崩したり、資産形成を中断したりする状態では、家計全体として安定しているとはいえません。

返済額がすぐ増えない場合も元金の減りに注意する

5年ルールを採用している住宅ローンでは、適用金利が上がっても毎月返済額はすぐに変わらない場合があります。しかし、返済額が同じでも、その内訳は変化します。

金利上昇によって支払利息が増えると、毎月返済額のうち元金返済に回る金額が少なくなります。その結果、予定していたより住宅ローン残高が減らず、将来の返済に負担が先送りされる可能性があります。

125%ルールがある場合も、返済額の増加が直前の125%までに抑えられるだけです。利息負担そのものが125%に制限されるわけではありません。急激な負担増を緩和する仕組みではありますが、借り手の負担をなくす制度ではないことを理解しておきましょう。

「金利が上がったら固定へ変更する」だけでは不十分

変動金利を選び、「金利が上がり始めたら固定金利へ変更すればよい」と考える人もいます。しかし、変動金利の上昇が明確になった時点では、全期間固定金利や固定期間選択型の金利も、すでに上昇している可能性があります。

固定金利は長期金利の影響を受け、変動金利は短期金利の影響を受けるため、両者が同じ時期に同じ幅で動くとは限りません。変動金利の引き上げを待ってから固定へ変更すれば、現在提示されている固定金利で契約できるわけではないのです。

また、他の金融機関へ借り換える場合には、審査に加えて、事務手数料、登記費用、司法書士報酬などがかかります。収入が下がっていたり、健康状態や物件評価に問題があったりすると、希望どおりに借り換えられないこともあります。

将来の固定金利への変更を前提にするなら、変更可能な条件や手数料を契約前に確認し、「いつ、何を基準に見直すのか」を決めておくことが大切です。

FP相談で考えられる固定金利と変動金利の相談事例

ここでは、FP相談で想定される架空のモデルケースをもとに考えてみましょう。

夫婦ともに会社員の30代世帯で、世帯年収は900万円、子どもは2人、4,500万円の住宅ローンを35年返済で検討しているとします。現在は共働きのため家計に余裕があり、変動金利なら毎月返済額を抑えられます。夫婦は「これからも二人で働くので、変動金利でも問題ない」と考えています。

しかし、家計を詳しく確認すると、数年後には子どもの教育費が増え、妻が働く時間を減らす可能性もありました。さらに、住宅購入後も現在と同じ金額を貯蓄できる前提で借入額を決めており、収入減少と金利上昇が重なった場合の試算はしていませんでした。

この場合、単純に固定金利か変動金利かを選ぶ前に、次のような確認が必要です。

  • 片方の収入が減った場合でも返済を続けられるか
  • 金利が1%または2%上がった場合に毎月いくら残るか
  • 教育費が増える時期にも貯蓄を続けられるか
  • 購入後に生活防衛資金をどれだけ残せるか
  • 定年時の住宅ローン残高はいくらになるか

試算の結果、変動金利では金利上昇と教育費のピークが重なると貯蓄が難しくなるのであれば、全期間固定金利を選ぶ、固定と変動を組み合わせる、あるいは借入額を下げる方法が考えられます。

ここで重要なのは、固定か変動かという二者択一より、住宅予算そのものを調整したほうが効果的な場合があることです。購入価格を数百万円下げれば、金利上昇への耐久力が高まり、教育費や老後資金も準備しやすくなります。

誰にでも同じ金利タイプが適しているわけではありません。同じ世帯年収でも、子どもの人数、働き方、貯蓄額、希望する教育方針によって結論は変わります。

初心者が住宅ローンの金利選びで陥りやすい失敗

住宅ローンの比較では、目の前の返済額に意識が向きやすくなります。しかし、毎月返済額だけで判断すると、長期的なリスクを見落とすことがあります。

最も低い広告金利だけで金融機関を選ぶ

広告に表示されている金利は、一定の条件を満たした場合の最優遇金利であることがあります。すべての申込者に同じ金利が適用されるとは限りません。

また、金利が低くても、事務手数料や保証料が高い、希望する団信に上乗せ金利が必要、固定金利への変更条件が厳しいといった違いがあります。金利だけではなく、諸費用と保障を含めた総合的な比較が必要です。

現在の共働き収入が完済まで続く前提で借りる

共働きによって借入可能額が増えても、返済できる金額まで同じように増えるとは限りません。出産、育児、病気、介護、転職などによって、どちらかの収入が減る可能性があります。

二人分の収入を最大限に使わなければ返済できない借入額では、金利上昇以前に家計の余力が不足しています。少なくとも一時的な収入減少を想定し、返済後も一定の余裕が残る設計にしましょう。

5年ルールがあれば返済負担は増えないと思う

5年ルールは毎月返済額の見直しを遅らせる仕組みであり、金利上昇の影響をなくすものではありません。返済額が変わらない間も利息が増え、元金が減りにくくなることがあります。

さらに、すべての商品に5年ルールや125%ルールがあるわけではありません。名称だけを知って安心せず、自分が検討している住宅ローンにどのような返済ルールがあるかを確認してください。

頭金や繰り上げ返済に現金を使いすぎる

頭金を増やせば借入額を減らせますが、住宅購入時には諸費用、引っ越し、家具・家電などにもお金がかかります。購入後に手元資金がほとんど残らなければ、急な修繕や収入減少に対応できません。

繰り上げ返済も同様です。一度返済に充てたお金は、基本的に自由に引き出せません。金利上昇への対策として繰り上げ返済をする場合でも、生活防衛資金や近い将来に使う教育費を残すことが前提です。

固定と変動で迷う場合はミックスローンも選択肢

固定金利と変動金利のどちらか一方に決めきれない場合は、借入額を二つに分け、一部を固定金利、残りを変動金利にするミックスローンがあります。

たとえば、4,000万円の借入のうち2,000万円を全期間固定金利、残りの2,000万円を変動金利にする方法です。金利が上昇しても影響を受けるのは変動金利部分に限られるため、すべてを変動金利にするより返済額の増加を抑えられます。一方で、すべてを固定金利にするより、当初の返済額を抑えやすくなります。

ミックスローンは、どちらかの金利タイプに賭けるのではなく、金利変動の影響を分ける考え方です。ただし、必ず得になる方法ではありません。

借入を複数に分けることで契約や返済管理が複雑になり、金融機関によっては事務手数料や印紙代、登記関連費用が増える場合があります。また、金利が上がれば変動部分を固定にしておけばよかったと感じ、金利が上がらなければ固定部分を変動にしておけばよかったと感じる可能性もあります。

ミックスローンを選ぶ場合は、単純に半分ずつにする必要はありません。家計が金利上昇を吸収できる範囲を計算し、固定部分と変動部分の割合を決めることが大切です。

共働き世帯はペアローンと収入合算にも注意する

共働き世帯では、金利タイプだけでなく、住宅ローンを誰がどのように借りるかも重要です。代表的な方法に、ペアローンと収入合算があります。

ペアローンの仕組みと注意点

ペアローンは、夫婦それぞれが別々の住宅ローンを契約する方法です。夫婦が互いの債務について連帯保証人となるのが一般的で、それぞれが一定の要件を満たせば住宅ローン控除を受けられます。また、それぞれが団体信用生命保険に加入する形が基本です。

一方で、住宅ローンが二本になるため、事務手数料や登記費用なども二契約分かかる場合があります。どちらかに万一のことがあったときも、原則として団信で完済されるのは亡くなった人の債務のみです。もう一人の住宅ローンは残ります。

夫婦の収入を使って借入額を増やせることはメリットですが、どちらかの収入が減った場合に返済できるかを必ず確認しましょう。

収入合算には異なる仕組みがある

収入合算は、主な債務者の収入に配偶者などの収入を加えて審査を受ける方法です。ただし、収入合算には連帯保証型と連帯債務型があり、法律上の立場や住宅ローン控除、団信の取扱いが異なります。

連帯保証型では、収入を合算する人は主債務者ではなく連帯保証人となるため、原則として住宅ローン控除や団信の対象になりません。連帯債務型では二人が返済義務を負い、持分や返済負担など一定の条件を満たせば、双方が住宅ローン控除を受けられる場合があります。

実際の取扱いは金融機関や商品によって異なります。夫婦連生団信など、どちらかに万一のことがあった場合にローン残高全体が保障される商品もありますが、上乗せ金利や適用条件の確認が必要です。

ペアローンと収入合算の違いを「借入可能額」と「手続きの簡単さ」だけで比較せず、団信、住宅ローン控除、所有持分、諸費用、収入減少時の返済まで含めて判断しましょう。税務上の取扱いは個別事情によって異なるため、必要に応じて金融機関や税務署、税理士に確認してください。

住宅ローンは定年時の残債から逆算する

住宅ローンは借入時の金利だけでなく、どのように返済を終えるかが重要です。特に確認したいのが、定年時にいくら残っているかです。

たとえば、40歳で35年ローンを組めば、契約上の完済年齢は75歳になります。現役時代と同じ収入が続かない中で返済することになれば、老後の生活費や医療・介護費を圧迫する可能性があります。

基本的には定年までの完済を目標にします。ただし、返済期間を短くすると毎月返済額が増えるため、無理に契約期間を短くすることが常に正解とは限りません。35年で借りて毎月返済額を抑えながら、定年時に残る金額を預貯金や運用資産で準備する方法もあります。

大切なのは、定年時に住宅ローンが残ること自体ではなく、その残債をどうするか決まっていないことです。契約前に次の点を確認しておきましょう。

  • 定年時の住宅ローン残高
  • 定年までに準備できる預貯金や運用資産
  • 退職金を返済に使う場合に残る老後資金
  • 年金収入から返済を続けた場合の家計
  • 住宅の修繕費や管理費、固定資産税

退職金を全額返済に使う前提にすると、老後の生活資金が不足する可能性があります。住宅ローンだけを完済するのではなく、完済後の生活まで含めて出口を設計する必要があります。

繰り上げ返済と資産運用はどちらを優先する?

住宅ローン金利が低ければ、繰り上げ返済を急がず、新NISAなどを利用した資産運用を優先したほうが合理的だと考える人もいます。確かに、運用リターンが住宅ローン金利を上回れば、計算上は資産運用を優先したほうが資産を増やせます。

ただし、住宅ローン金利と投資の期待リターンは性質が異なります。繰り上げ返済による利息軽減効果は契約条件に基づいて見通せますが、投資のリターンは確定していません。運用中に元本割れすることもあります。

特に注意したいのは、変動金利の上昇と株式市場の下落が同じ時期に起こる可能性です。金利が上がったため投資資産を売却して繰り上げ返済しようとしても、その時点で相場が下落していれば、損失を確定させることになるかもしれません。

そのため、住宅ローン返済と資産運用を両立する場合は、次の順番で考えるのが基本です。

  1. 生活防衛資金を確保する
  2. 教育費や住宅修繕費など近い将来の支出を確保する
  3. 金利上昇後も毎月返済できる家計をつくる
  4. 余裕資金で長期の資産運用を行う
  5. 金利、残債、資産額を定期的に確認する

住宅ローン控除を受けている間は、繰り上げ返済を急がないほうがよいケースもあります。一方、繰り上げ返済によって返済期間が制度上の要件を下回ると、控除を受けられなくなる可能性があります。入居年や住宅の性能などによって制度の適用条件が異なるため、実行前に金融機関や税務署などへ確認してください。

資産運用を優先する場合も、住宅ローン金利との差だけで決めないことが大切です。投資には元本割れの可能性があるため、住宅ローンの返済に必要な資金まで値動きの大きい商品に投資するのは避けたほうがよいでしょう。

まとめ|固定か変動かは家計が耐えられる範囲で決める

住宅ローンの固定金利と変動金利は、どちらか一方が常に正解というものではありません。全期間固定金利は、当初の金利が比較的高い代わりに、完済までの返済額を確定できます。変動金利は当初の返済額を抑えやすい一方、将来の金利上昇による負担を借り手が引き受けます。

固定金利と変動金利を選ぶときの要点は、次のとおりです。

  • 金利が上がるかどうかを当てることを判断の前提にしない
  • 変動金利は金利が1%・2%上昇した場合も試算する
  • 教育費や収入減少と金利上昇が重なる場合を考える
  • 5年ルールや125%ルールは利息増加をなくす制度ではない
  • 固定期間選択型は完済まで金利が固定されるとは限らない
  • 金利だけでなく、団信、諸費用、優遇条件も比較する
  • ペアローンや収入合算では、片方の収入が減った場合も考える
  • 定年時の残債と完済方法を契約前に確認する
  • どちらを選んでも余裕がない場合は借入額を見直す

金利が少し上昇しただけで生活が成り立たなくなる借入額では、変動金利を選ぶリスクが高くなります。一方、固定金利の返済額によって必要な貯蓄ができない場合も、住宅予算が大きすぎる可能性があります。

住宅ローンで後悔を避けるために最も大切なのは、借りられる上限まで借りることではありません。金利や収入が変化しても、家族の生活、教育費、老後資金を守りながら無理なく返せる金額に抑えることです。

固定金利と変動金利のどちらが自分に合っているかは、金利の高低だけでなく、家計の余力とライフプランから判断しましょう。

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