投資の手じまいはいつしたらいい?出口戦略と相続対策|老後に困らない資産整理の考え方をFPが解説

目次

はじめに

NISAやiDeCoの普及によって、多くの方が資産運用を始めるようになりました。

しかし、投資に関する情報の多くは「どう増やすか」に集中しています。

どの投資信託を選ぶべきか。
毎月いくら積み立てるべきか。
NISAをどう活用するべきか。

こうした情報は非常に重要です。

一方で、資産運用を続ける中で意外と見落とされるのが「出口戦略」です。

私はFPとして相談を受ける中で、

「積立投資は始めたけれど、いつ売ればいいのか分からない」

「老後になっても株式を持ち続けるべきなのか迷っている」

という相談を受けることがあります。

投資は始めることも大切ですが、本当に重要なのは必要な時に使える状態にしておくことです。

この記事では、投資の出口戦略、老後の資産取り崩し、相続対策についてFPの視点から詳しく解説します。


出口戦略とは何か

投資には必ずゴールがある

資産運用というと、資産を増やすことが目的だと思われがちです。

しかし本来、投資はお金を増やすためではなく、お金を使うために行います。

例えば、

  • 老後資金として使う
  • 住宅購入資金として使う
  • 子どもの教育資金として使う
  • 家族へ資産を残す

など、最終的な目的があります。

つまり投資には必ず出口があります。

ゴールを決めずに走り続けるマラソンが存在しないように、出口を考えない資産運用も本来は存在しないはずです。


買うことより売ることの方が難しい

投資初心者は購入時には慎重になります。

ところが売却時になると、

「もっと上がるかもしれない」

「まだ売るのは早いかもしれない」

という心理が働きます。

利益が出ていると欲が出ます。

損失が出ていると売れなくなります。

結果として、

「いつか使う予定だった資金」

が永遠に運用され続けることも珍しくありません。


資産形成期と資産活用期は考え方が違う

若い頃と老後では投資の目的が変わる

出口戦略を考える上で重要なのが、人生には資産形成期と資産活用期があることです。

資産形成期

20代〜60代前半頃

目的は資産を増やすことです。

そのため、

  • 株式比率を高める
  • 積立を継続する
  • 下落時も売らない

という考え方が有効です。


資産活用期

60代以降

目的は資産を使うことです。

ここで重要なのは、

「いかに増やすか」

ではなく、

「いかに減らさず使うか」

になります。

資産形成期と同じ感覚で運用を続けると、大きな下落によって生活資金に影響が出る可能性があります。


なぜ高齢になるとリスクを下げる必要があるのか

若い頃なら暴落しても問題ありません。

20代や30代なら、その後何十年も運用を続けられるからです。

しかし70代になると話は変わります。

例えば老後資金として1,000万円を保有している人がいたとします。

その大半を株式で運用していた場合、相場急落で500万円〜600万円程度まで減少する可能性があります。

現役世代なら回復を待てます。

しかし老後の生活費として使う予定の資産では、同じことはできません。

そのため年齢とともにリスク資産を減らしていく考え方が重要になります。


リーマンショックから学ぶ出口戦略

株式市場は想像以上に下落する

近年投資を始めた方の中には、

「全世界株式なら安心」

「S&P500なら大丈夫」

と思っている方もいます。

確かに長期投資では有力な選択肢です。

しかし株式市場は時として大きく下落します。

2008年のリーマンショックでは、S&P500は高値から安値まで約57%下落しました。

仮に1,000万円投資していた場合、一時的に430万円程度まで減少した計算になります。

また現在人気のオールカントリーも、中身は世界株式です。

当時同様の世界株式インデックスは50%前後下落しています。


本当に怖いのは回復期間

リーマンショックで重要なのは下落率だけではありません。

回復までに長い時間がかかったことです。

S&P500がリーマンショック前の水準を回復するまでには、およそ4〜5年かかりました。

若い投資家なら問題ないかもしれません。

しかし、

  • 退職直後
  • 年金生活開始直後
  • 介護費用が必要

という状況ではどうでしょうか。

4〜5年待てない可能性があります。


シーケンス・オブ・リターンリスクとは

老後資金で特に注意したいのが「シーケンス・オブ・リターンリスク」です。

これは、

取り崩し開始直後に暴落が起きるリスク

を指します。

例えば、

Aさん
退職直後に暴落

Bさん
退職10年後に暴落

同じ下落率でも、Aさんの方が大きな影響を受けます。

なぜなら、資産が減った状態で取り崩しを続けるからです。

出口戦略とは、このリスクを減らすための準備でもあります。


FP相談で実際にあったケース

出口を考えずに積立を続けていたケース

実際に相談を受けた方の中に、

「資産が増えているから問題ない」

と考えていた方がいました。

資産は順調に増え、評価益も大きくなっていました。

しかし、

いつ使うのか

どのように取り崩すのか

を全く決めていませんでした。

結果として相場急落に巻き込まれ、評価益の大部分が失われました。

もちろん長期投資では回復する可能性があります。

しかしその方は60代後半で、老後資金として使う予定だったのです。

その時に、

「利益が出ていた時に一部だけでも整理しておけば良かった」

と話されていました。


75歳頃までに資産整理を考えたい理由

判断能力は永遠ではない

年齢を重ねると、

  • 判断能力
  • 情報収集能力
  • 記憶力

は少しずつ低下する可能性があります。

もちろん個人差はあります。

しかし将来の自分がどうなるかは誰にも分かりません。


認知症リスクも考慮する

認知症になると金融取引が難しくなる場合があります。

その結果、

  • 株式を売却できない
  • 投資信託を解約できない
  • 資産移転できない

という問題が発生することがあります。

家族でも自由に取引できるわけではありません。

成年後見制度などが必要になる場合もあります。


75歳は一つの目安

私はFPとして、

75歳頃までには資産整理の方向性を決めておくことをおすすめしています。

これは投資をやめるべきという意味ではありません。

判断能力が十分にあるうちに、

  • 相続対策
  • 資産整理
  • 口座整理

を進めておくことが重要なのです。


老後の理想的な取り崩し順序

基本的な考え方

一般的には次の順番が一つの目安です。

個別株式

まず整理したいのが個別株です。

個別株には、

  • 市場リスク
  • 企業固有リスク

の両方があります。

世界経済が回復しても、個別企業が回復するとは限りません。

倒産する可能性もあります。


投資信託

投資信託は多数の企業に分散されています。

そのため個別株より管理しやすく、高齢期にも残しやすい資産です。


債券

債券は比較的値動きが小さく、守りの資産として機能します。

高齢期後半まで保有しやすい資産と言えるでしょう。


現預金

最後に現預金です。

生活費や緊急資金として活用できます。


ただし売却順序は柔軟に考える

ここで紹介した順番は絶対ではありません。

例えば、

  • 株価が大幅に上昇している
  • 債券価格が高騰している
  • 為替が極端に円安になっている

場合は、先に売却した方が合理的なケースもあります。

重要なのは、

資産全体を見て判断することです。


最後に個別株は残さない

一方で、最後に個別株だけは残さない方が良いと考えています。

理由は、

  • リスクが集中している
  • 管理が複雑
  • 相続人が困りやすい

からです。

高齢期の資産管理は、できるだけシンプルにすることが重要です。


相続を見据えた資産整理

家族が分かる状態にしておく

意外と多いのが、

「家族が資産内容を把握していない」

ケースです。

ネット証券や複数口座を利用していると、相続時に発見されないこともあります。


エンディングノートを活用する

最低限、

  • 銀行口座
  • 証券口座
  • 保険契約
  • 不動産

は一覧化しておきましょう。

家族の負担が大きく変わります。


口座を集約する

若い頃は複数口座でも問題ありません。

しかし高齢期は管理のしやすさが重要です。

口座を整理しておくことで、相続手続きもスムーズになります。


まとめ

投資で重要なのは、どう増やすかだけではありません。

どう使い、どう終わらせるかも同じくらい重要です。

特に老後資金として運用している場合は、出口戦略を考えずに運用を続けることが大きなリスクになります。

重要なポイントは次の通りです。

  • 投資には必ず出口がある
  • 資産形成期と資産活用期では考え方が異なる
  • リーマンショックではS&P500が約57%下落した
  • 回復には約4〜5年かかった
  • シーケンス・オブ・リターンリスクに注意する
  • 75歳頃までに資産整理を検討したい
  • 個別株→投資信託→債券→現預金が一つの目安
  • 最後に個別株は残さない
  • 相続人が困らないよう準備する

資産運用の成功とは、お金を増やすことではなく、必要な時に安心して使える状態を作ることです。

ぜひ出口戦略まで含めて、ご自身の資産運用を見直してみてください。

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