家計相談の現場で、よく受ける質問があります。
「収入のうち、どれくらいを貯蓄に回せばよいですか」
「新NISAでは毎月いくら積み立てるべきでしょうか」
「今は投資できていますが、子どもが大きくなっても続けられるか不安です」
資産形成を始めようとすると、自分の貯蓄額や投資額が適切なのか気になるものです。SNSや動画では、「手取りの20%を投資するべき」「新NISAで月5万円は積み立てたい」といった情報も見かけます。
しかし、すべての家庭に共通する理想的な家計割合はありません。同じ手取り25万円でも、一人暮らしと子育て世帯では必要な生活費が違います。住居費、車、住宅ローン、教育費、現在の預貯金、将来の予定によって、貯蓄と投資へ回せる金額は変わります。
手取り別の家計割合は、必ず達成しなければならない目標ではなく、自分の家計が大きく崩れていないかを確認するための目安です。
まず年間特別費と生活防衛資金を確保し、今後10年以内に使う予定のお金を取り分けます。その後に残る余剰資金を、老後などに向けた長期投資へ回すのが基本です。投資額は手取りだけでなく、家族構成や金融資産の残高まで見て決める必要があります。
この記事では、金融商品の販売を目的としない独立系FPの立場から、手取り20万〜40万円以上の家計割合、生活費・貯蓄・投資の分け方、家族構成に合わせた調整方法を解説します。
手取り別の家計割合に絶対的な正解はない
手取り別の家計割合を確認するとき、最初に理解しておきたいのは、割合はあくまで点検基準だということです。
手取りの15%を投資できているから健全、5%しか投資できていないから問題があると、割合だけで判断することはできません。
同じ手取りでも家族構成で余裕は変わる
例えば、手取り25万円の一人暮らしで、家賃を抑えられている人なら、毎月5万円以上を貯蓄や投資へ回せることがあります。
一方、同じ手取り25万円でも、子どもがいて、車が必要な地域で生活している家庭では、同じ金額を資産形成へ回すのは難しいでしょう。食費、教育費、車の維持費など、一人暮らしにはない支出が発生するためです。
共働き世帯と一馬力世帯でも必要な備えは異なります。共働きなら一人が休職しても、もう一人の収入が残る可能性があります。一馬力世帯では、働いている人の収入が途絶えた場合に家計全体への影響が大きいため、生活防衛資金を厚めに持つ必要があります。
住居費だけで家計の良し悪しを判断しない
「家賃は手取りの何%以内」といった基準もありますが、住居費だけで家計を判断するのは適切ではありません。
勤務先に近い住宅を選んで住居費が高くなっても、車を持たずに済み、交通費や通勤時間を減らせるなら合理的な場合があります。反対に、家賃の安い郊外へ移っても、車の購入費、保険、ガソリン、駐車場、車検などが増えれば、家計全体の負担が重くなるかもしれません。
住宅ローンがある場合も、毎月返済額だけで住居費を判断できません。管理費、修繕積立金、固定資産税、駐車場、将来の修繕費まで含めて確認します。
家計では、一つの費目が平均より高いかではなく、その支出によって別の負担が減っているか、将来の貯蓄を続けられるかを見ることが大切です。

家計割合は目標ではなく点検基準
家計割合の表を見て、「生活費を必ず70%以下にしなければならない」と考える必要はありません。
子どもの大学進学、育休による収入減少、住宅購入、親の介護などが重なる時期には、生活費の割合が高くなり、投資割合が下がることがあります。反対に、独身時代や子どもが小さい時期は、貯蓄と投資の割合を高めやすくなります。
割合を使う目的は、他人と比較することではありません。前年と比べて固定費が増えすぎていないか、将来資金をまったく準備できていない状態になっていないかを確認することです。
家計割合を考えるときの「手取り」とは
家計割合を正しく計算するには、基準となる手取りを統一する必要があります。
額面給与ではなく可処分所得で計算する
手取りとは、一般的には給与の額面から所得税、住民税、社会保険料などを差し引き、実際に使える金額のことです。家計割合は、年収や給与の額面ではなく、この手取りを基準に計算します。
例えば、額面月収が30万円でも、銀行口座へ振り込まれる金額が24万円なら、原則として24万円を基準にします。額面30万円をもとに貯蓄や投資額を決めると、実際に使えるお金を超えた予算になってしまいます。
ただし、財形貯蓄や社内預金、企業型DCの加入者掛金などが給与から先に差し引かれている場合は、その金額もすでに行っている貯蓄・投資として加えて確認します。
共働きは世帯全体の手取りを合計する
夫婦で家計を共有している場合は、世帯全体の手取りを合計します。夫の手取り25万円、妻の手取り15万円なら、世帯手取り40万円として生活費、貯蓄、投資の割合を計算します。
夫婦が別々に家計を管理していても、住居費、教育費、老後資金などは世帯全体に関係します。どちらが何を負担しているかだけでなく、二人の収入に対して家計全体でいくら使い、いくら資産が増えているかを確認しましょう。
また、現在は共働きでも、出産後の育休や時短勤務によって手取りが減る可能性があります。現在の世帯手取りだけを前提に住宅ローンや固定費を設定すると、収入減少時に余裕がなくなる場合があります。
賞与・残業代・児童手当の扱い
毎月の基本的な家計予算は、安定して受け取れる手取りで作ります。残業代や歩合給の変動が大きい場合は、最も多い月ではなく、少なめの月を基準にすると安全です。
賞与は、毎月の生活費を補う前提にしすぎない方がよいでしょう。会社の業績などによって減る可能性があるためです。固定資産税、車検、年払い保険料、旅行、家電購入などの年間特別費や、貯蓄・投資に振り分けます。
児童手当も家計収入の一部ですが、日常生活費へ混ぜず、教育費として別に貯める方法があります。ただし、現在の生活費に余裕がなければ、子育てに必要な支出へ使うことも不自然ではありません。家庭の目的に合わせて決めます。

家計を「生活費・貯蓄・投資」に分ける
家計簿を細かく管理しすぎると、記録だけで疲れてしまいます。最初は、お金の行き先を生活費・貯蓄・投資の3つに分けるだけでも十分です。
生活費|現在の暮らしを維持するお金
生活費には、住居費、食費、光熱費、通信費、保険料、交通費、日用品費、医療費、教育費、娯楽費などが含まれます。
固定費と変動費へ分けて確認する方法もあります。固定費は家賃や住宅ローン、通信費、保険料など、毎月継続的に発生する支出です。変動費は食費、日用品、娯楽費など、月によって金額が変わる支出です。
固定費が高い家計は、収入が減っても短期間では支出を下げにくくなります。その場合は、現金の余裕を厚めに持つ必要があります。
貯蓄|緊急時と10年以内に使うお金
貯蓄は、金額を減らさないことを優先する資金です。病気、失業、休職などに備える生活防衛資金や、数年以内に使う教育費、住宅購入資金、車の買い替え費用などを準備します。
貯蓄は単に銀行残高を増やすことではありません。「何のために、いつ使うのか」を決めて分けると、必要な金額を把握しやすくなります。
10年以内でも使用時期と必要額が明確で、元本割れを避けたい資金は、預貯金を中心に準備します。個人向け国債などを検討できる場合もありますが、商品ごとの中途換金条件を確認しましょう。
投資|10年以上使わない長期資金
投資は、老後資金など老後、原則として10年以上使わない資金で検討します。株式や投資信託には元本割れの可能性がありますが、長期・積立・分散によって、物価上昇に備えながら資産の成長を目指せます。
ただし、10年以上運用すれば必ず増えるわけではありません。必要な時期に相場が下落している可能性もあるため、使用時期が近づいたら段階的に現金化する出口戦略も必要です。
年間特別費は別に管理する
家計で見落としやすいのが、毎月は発生しない年間特別費です。
固定資産税、自動車税、車検、年払い保険料、帰省、旅行、冠婚葬祭、家具・家電の買い替えなどが該当します。
年間特別費が60万円かかるなら、毎月5万円を取り分ける必要があります。この5万円は将来使うことが決まっているため、純粋な貯蓄ではありません。
月末に口座残高が増えていても、後から税金や車検で使う予定なら、その分まで「資産形成できた」と考えないようにしましょう。
家計割合を計算する前の5つの準備
手取りを生活費・貯蓄・投資へ分ける前に、次の順番で家計を整理します。
1.安定した月手取りを確認する
世帯全体で毎月安定して受け取れる手取りを確認します。変動する残業代、賞与、副業収入を含めなければ生活できない予算は、収入減少に弱くなります。
2.固定費・変動費を合計する
住居費、通信費、保険料などの固定費と、食費、日用品費、娯楽費などの変動費を合計します。
家計簿をつけていない場合は、銀行口座とクレジットカードの明細を3か月程度確認するだけでも、おおよその生活費を把握できます。
3.年間特別費を12で割る
過去1年間の税金、保険、車、旅行、家電などを合計し、12で割ります。通常の生活費にこの金額を加えることで、月次だけでなく年間で黒字になる予算を作れます。
4.生活防衛資金の不足額を確認する
会社員で収入が比較的安定している場合は、基礎生活費の6か月分程度が一つの目安です。自営業、歩合給、一馬力の子育て世帯などは、1年分以上を検討します。
生活防衛資金が不足している間は、投資を少額に抑え、現金貯蓄を優先する考え方があります。

5.今後10年以内の予定支出を整理する
教育費、住宅購入、リフォーム、車の買い替え、転職や独立など、予定している支出と時期を書き出します。
ここまで取り分けた後に残るお金が、長期投資へ回せる余剰資金です。
手取り別の理想的な家計割合と金額の目安
ここから紹介する割合は、公的な基準やすべての家庭に共通する正解ではありません。年間特別費を生活費または目的別貯蓄として確保し、生活防衛資金を作りながら長期投資を始めるモデルケースです。
手取り20万円の場合
手取り20万円では、生活費80%、貯蓄15%、投資5%を一つの目安とします。
- 生活費:16万円
- 貯蓄:3万円
- 投資:1万円
この段階では、投資額を増やすことより、毎月と年間の家計を赤字にしないことを優先します。生活防衛資金がない場合は、投資を月5,000円など少額にし、現金貯蓄を増やす方法もあります。
手取り25万円の場合
手取り25万円では、生活費75%、貯蓄15%、投資10%が一つの目安です。
- 生活費:18万7,500円
- 貯蓄:3万7,500円
- 投資:2万5,000円
手取りが増えても、家賃、通信費、保険料、車などの固定費を同時に増やすと、資産形成へ回せるお金は残りません。月2万5,000円が難しければ、投資は月1万円程度から始めても問題ありません。
手取り30万円の場合
手取り30万円では、生活費70%、貯蓄15%、投資15%を一つの目安とします。
- 生活費:21万円
- 貯蓄:4万5,000円
- 投資:4万5,000円
この水準では、NISAを使った積立投資も検討しやすくなります。ただし、結婚、出産、住宅購入などを控えている場合は、月4万5,000円すべてを長期投資へ回さず、現金準備を優先する考え方があります。
手取り35万円の場合
手取り35万円では、生活費65%、貯蓄15%、投資20%が一つの目安です。
- 生活費:22万7,500円
- 貯蓄:5万2,500円
- 投資:7万円
手取り35万円でも、住宅ローン、車、保険、教育費が重なれば余裕は小さくなります。特に子どもが小さい時期は積み立てやすくても、中学、高校、大学と進むにつれて教育費が増える可能性があります。
現在月7万円を投資できても、一部を教育費や住宅修繕費として現金で確保する判断が必要です。
手取り40万円以上の場合
手取り40万円では、生活費60%、貯蓄15%、投資25%を一つの目安とします。
- 生活費:24万円
- 貯蓄:6万円
- 投資:10万円
手取り40万円以上になると資産形成の自由度は高まりますが、投資10万円は誰にでも適した金額ではありません。子育てや住宅費の負担が大きい家庭では、資産形成率40%を維持するのは難しいことがあります。
収入が増えるたびに住宅、車、保険、外食などの固定的な支出を上げると、高収入でもお金が残りません。将来の収入減少にも耐えられる生活水準を意識しましょう。
手取り別の家計割合一覧表
| 手取り月収 | 生活費 | 貯蓄 | 投資 | 投資額 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 80%・16万円 | 15%・3万円 | 5%・1万円 | 1万円 |
| 25万円 | 75%・18万7,500円 | 15%・3万7,500円 | 10%・2万5,000円 | 2万5,000円 |
| 30万円 | 70%・21万円 | 15%・4万5,000円 | 15%・4万5,000円 | 4万5,000円 |
| 35万円 | 65%・22万7,500円 | 15%・5万2,500円 | 20%・7万円 | 7万円 |
| 40万円 | 60%・24万円 | 15%・6万円 | 25%・10万円 | 10万円 |
貯蓄と投資を合計した割合を「資産形成率」として見ると、このモデルでは手取り20万円で20%、25万円で25%、30万円で30%、35万円で35%、40万円で40%になります。
ただし、車検や旅行など後から使う年間特別費は、資産形成率に含めません。資産形成率40%は、単身世帯や住居費を抑えられている家庭では可能な場合がありますが、子育て世帯が達成すべき最低基準ではありません。
生活防衛資金が不足している場合は、例えば手取り30万円でも、生活費75%、貯蓄20%、投資5%から始める方法があります。現金の土台ができた後に、貯蓄の一部を長期投資へ振り替えます。
家族構成・住まい・車による調整方法
手取り別のモデル割合は、家庭の条件に合わせて補正します。
一人暮らしは住居費の影響が大きい一方、家賃を抑えられれば貯蓄・投資率を高めやすくなります。ただし、病気や失業時に家計を支える人がいない場合は、生活防衛資金を厚めに持ちます。
共働き夫婦は世帯収入が高くなりやすく、収入源も分散されます。しかし、出産後の育休や時短勤務で手取りが減る可能性があるため、現在の収入だけで固定費を設定しないことが大切です。
子育て世帯では、将来の教育費を長期投資と分けます。進学までの期間が短い教育費は預貯金を中心に準備し、老後まで使わない資金を投資へ回します。
一馬力世帯や自営業世帯は、収入が途絶えたときの影響が大きいため、投資割合を抑え、生活防衛資金を1年分以上確保する選択肢があります。
住宅ローンや車がある家庭では、毎月返済額だけを見ないことが重要です。住宅は税金、管理費、修繕費、車は税金、保険、車検、燃料、駐車場、買い替え費用まで含めた年間総額で確認します。
同じ手取りでも、こうした条件によって必要な生活費と現金は変わります。モデル割合との差だけで家計を評価せず、今後の支出を予定どおり準備できているかを基準に調整しましょう。
貯蓄と投資の割合はどう決めるか
手取り別の目安を確認した後は、自分の家計に合った貯蓄と投資の割合を決めます。
同じ手取り30万円でも、預貯金が500万円ある人と、10万円しかない人では優先順位が異なります。生活防衛資金が十分にあり、近い将来の支出も準備できている人は、長期投資の割合を高められる可能性があります。一方、預貯金が少なく、車検や教育費を控えている人は、まず現金を増やす必要があります。
毎月の割合だけでなく、すでに保有している預貯金、NISA、iDeCo、企業型DC、住宅ローンなどの資産と負債を合わせて考えましょう。
生活防衛資金を作るまでは貯蓄を優先する
生活防衛資金は、病気、失業、休職、収入減少、急な修理などに備えるお金です。必要なときにすぐ使える預貯金で確保します。
会社員で収入が比較的安定している場合は、基礎生活費の6か月分程度が一つの目安です。自営業、歩合給、一馬力の子育て世帯、転職や独立を予定している人は、1年分以上を検討します。
例えば、毎月の基礎生活費が25万円なら、6か月分で150万円、1年分では300万円です。この金額を確保できていない段階で、手取りの20%を投資へ回す必要はありません。
生活防衛資金がないまま投資を増やすと、急な出費が発生したときに、相場が下落していても売却しなければならない可能性があります。長期投資を続けるためにも、先に現金の土台を作ることが大切です。

生活防衛資金を確保したら長期投資を増やす
生活防衛資金を確保できた後は、毎月の貯蓄をすべて普通預金へ積み上げ続ける必要はありません。
今後10年以内に使う予定資金を確認し、それも準備できているなら、貯蓄へ回していた金額の一部をNISAなどの長期投資へ振り替えられます。
例えば、手取り30万円で貯蓄4万5,000円、投資1万5,000円から始めた人が、生活防衛資金を確保した後に、貯蓄2万円、投資4万円へ変更する方法があります。
貯蓄と投資の割合は、最初に決めたまま固定するものではありません。現金の準備状況に合わせて段階的に変えていきます。
10年以内に使うお金は投資しすぎない
教育費、住宅購入の頭金、車の買い替え、リフォーム、独立資金など、10年以内に使う予定があるお金は、値動きの大きい投資へ回しすぎないようにします。
特に1〜3年以内に使う資金は、普通預金など流動性と元本の安定性を優先します。3〜5年程度先なら、預貯金や個人向け国債なども選択肢になります。5〜10年先であっても、使用時期と必要額が明確で、不足を許容できない資金は安全性を重視します。
「10年以内なら債券型投資信託でよい」とも限りません。債券型投資信託は、金利上昇や投資先の信用悪化によって基準価額が下がることがあります。外国債券には為替変動リスクもあります。
使う時期を延期できず、元本割れすると困る資金は、利回りより確実に使えることを優先しましょう。
10年以上使わないお金は分散投資を検討する
老後資金など、10年以上使う予定がないお金は、株式を含む分散投資を検討しやすい資金です。
預貯金だけで長期間保有すると、物価上昇によって購買力が低下する可能性があります。一方、株式や投資信託には元本割れの可能性があり、数年単位で値下がりする場合もあります。
投資先を国、企業、資産などへ分散し、必要な時期が近づいたら段階的に現金へ移します。運用期間が10年以上あれば必ず増えるわけではないため、家計に影響しない範囲で行うことが前提です。
投資額は「今の最大額」ではなく家計から決める
積立投資の金額は、今月投資できる最大額ではなく、年間収支と今後のライフイベントを踏まえて決めます。
現在は月5万円を投資できても、3年後に育休、住宅購入、教育費の増加などがあれば、同じ金額を続けられない可能性があります。最初から家計の限界まで投資すると、予定外の支出が発生するたびに預貯金を取り崩すことになります。
10年間続けられるかを一つの目安にする
株式を中心とした積立投資は、短期間で利益を得る方法ではありません。途中の値下がりを受け入れながら、長期で継続することが基本です。
そのため、投資額を決めるときは、「今後10年程度、この金額を続けても家計に無理がないか」を一つの目安にします。
ただし、10年間まったく同じ金額に固定しなければならないわけではありません。重要なのは、家計が苦しくなったときに投資資産を売却しなくても済む金額にすることです。
今は月5万円投資できても、教育費の増加を考えると月2万〜3万円が安定して続けられる金額なら、最初はその範囲で始めます。余った資金は、教育費、住宅修繕費、車の買い替えなどへ振り分けます。
積立額はライフイベントに合わせて変更してよい
結婚、出産、住宅購入、転職、介護などによって家計が変化した場合は、積立額を増減しても問題ありません。
積立額を変更すると、ドルコスト平均法が成立しなくなるわけではありません。一定期間ごとに決めた金額を継続的に購入していれば、価格が安いときに多く、高いときに少なく買うという定額購入の特徴は残ります。
注意したいのは、家計ではなく相場の動きだけを理由に変更することです。株価が上昇して周囲が利益を得ているから増額し、下落すると怖くなって停止する行動は、高値で多く買い、安値で買わない結果につながる可能性があります。
家計や目的の変化による増減は合理的な見直しです。相場への感情的な反応とは分けて考えましょう。
年1回程度の見直しで無理を防ぐ
積立額は、毎月変更する必要はありません。年1回程度、次の項目を確認します。
- 手取り収入が増減していないか
- 年間特別費を準備できているか
- 生活防衛資金が不足していないか
- 今後5〜10年の支出予定が変わっていないか
- 投資資産が特定の国や資産へ偏っていないか
- 住宅ローンや保険の負担が増えていないか
昇給して家計に余裕が生まれたら積立額を増やし、育休や教育費によって余裕が減れば積立額を下げます。資産形成では、常に増額することより、生活と両立しながら継続することが大切です。
新NISA・iDeCoを家計にどう組み込むか
長期投資へ回せる金額が決まったら、新NISAやiDeCoの利用を検討します。先に制度の枠を見て投資額を決めるのではなく、家計から投資可能額を計算し、その範囲で制度を使うという順番です。
NISAの年間枠を投資目標にしない
現行NISAでは、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円で、合計年間最大360万円まで投資できます。非課税保有限度額は取得金額で合計1,800万円であり、そのうち成長投資枠は1,200万円までです。
しかし、これらは非課税で投資できる上限であり、利用者が毎年投資すべき金額ではありません。
つみたて投資枠の年間120万円を使い切るには、単純計算で月10万円の投資が必要です。手取り40万円の家庭にとっては25%に相当します。生活防衛資金や教育費が不足するなら、枠を使い切る必要はありません。
NISAでは運用益を非課税にできますが、元本割れの可能性はあります。税制上のメリットと投資リスクを分けて考えましょう。

iDeCoは60歳まで使わない老後資金
iDeCoは、掛金が所得控除の対象となり、制度内の運用益も非課税になるなどのメリットがあります。一方、積み立てた資産は原則として60歳まで引き出せません。
老後専用の資金として分けたい人には向いていますが、教育費、住宅購入、転職、独立などへ使う可能性があるお金を入れることには慎重な判断が必要です。
掛金の上限は、働き方や勤務先の企業年金によって異なります。また、所得が少ない場合は、掛金の所得控除による節税効果も小さくなります。
資金を途中で使う可能性がある人は、預貯金とNISAを優先し、老後まで確実に使わない金額をiDeCoへ回す考え方があります。

家計に組み込む優先順位
家計を整える一般的な順番は次のとおりです。
- 毎月と年間の家計を黒字にする
- リボ払いなど高金利の借入を返済する
- 生活防衛資金を確保する
- 10年以内の教育費や住宅費を準備する
- NISAなどで長期投資を行う
- 老後専用にできる資金はiDeCoも検討する
ただし、所得税率、勤務先の企業年金、退職金、家族構成によって、NISAとiDeCoの優先順位が変わることがあります。
また、企業型DC、財形貯蓄、給与天引きの持株会などを利用している場合は、それらも毎月の貯蓄・投資額に含めます。銀行口座から積み立てている金額だけを見て、追加投資しすぎないようにしましょう。
FP相談で多い積立額を高くしすぎたケース
30代の共働き夫婦で、世帯手取りが月40万円、子どもが1人いる家庭のケースを考えてみましょう。
新NISAをきっかけに、毎月10万円の積立投資を始めました。毎月の給与と通常の生活費だけを見ると、10万円を積み立てても赤字にはなっていませんでした。
しかし、半年ほどすると預貯金が増えず、月によっては貯金を取り崩すようになりました。
家計を詳しく確認すると、年払い保険料、自動車税、車検、帰省、家電の買い替え、子どもの習い事などに年間約60万円かかっていました。月平均では5万円ですが、通常の家計予算に含まれていなかったのです。
月次では10万円の黒字に見えても、年間特別費を差し引けば、長期投資へ安定して回せる金額は月5万円程度でした。
そこで、積立投資を月10万円から5万円へ減らし、残り5万円を生活防衛資金、教育費、年間特別費へ振り分けます。
夫婦は「積立額を下げるのは資産形成で負けたように感じる」と話していました。しかし、投資額の減額は失敗ではありません。無理に10万円を続け、急な支出のたびに投資信託を売却するより、月5万円を長期的に続ける方が家計は安定します。
初心者がやりがちな家計管理の失敗
余ったら貯蓄・投資しようとする
月末に余ったお金を貯蓄しようとしても、実際には残らないことがあります。給料が入った後に、生活防衛資金、予定資金、長期投資の順で先取りする仕組みを作ります。
ただし、先取り額を高くしすぎ、月末に預金を取り崩しているなら設定額が家計に合っていません。
年間特別費を貯蓄と数える
税金、車検、旅行、家電などのために貯めているお金は、将来使うことが決まっています。口座残高が増えても、すべてを純粋な貯蓄とは考えません。
「特別費」「教育費」「生活防衛資金」「老後資金」など、目的別に分けると実際の資産形成額を把握しやすくなります。
投資を優先して現金が不足する
NISAで投資していても、急な支出に対応する現金がなければ、相場下落時に売却する可能性があります。
生活防衛資金と10年以内に使うお金を確保し、その後に長期投資を行います。
収入増加に合わせて固定費を上げる
昇給するたびに家賃、住宅ローン、車、保険、通信契約などを増やすと、手取りが増えても家計に余裕は生まれません。
外食や旅行など一時的な支出は調整できますが、住宅ローンや保険などの固定費は短期間で下げにくいものです。収入が減っても維持できる水準かを確認します。
家計簿を細かくしすぎて続かない
食費を細かく分類したり、数百円単位の支出に神経質になったりすると、家計管理そのものが負担になります。
最初は、生活費、年間特別費、貯蓄、投資の4つを把握するだけでも十分です。改善が必要な場合に、住居費、保険、車など大きな支出から詳しく確認します。
家計割合はライフステージに合わせて変えてよい
家計割合は、一度決めたら一生変えないものではありません。収入や家族構成、必要な支出に合わせて調整します。
独身・共働き期は資産形成しやすい
独身時代や子どもがいない共働き期は、家計に余裕が生まれやすい時期です。この間に生活防衛資金を作り、長期投資を始めておくと、その後に積立額が下がっても運用期間を長く確保できます。
ただし、結婚、住宅、出産などが近い場合は、すべてを投資せず現金も準備します。
出産・育休・時短勤務では収入減少に備える
出産前は、現在の共働き収入ではなく、育休や時短勤務後の手取りで家計を試算します。
保育料、子どもの生活費などが増える一方、収入が減ることもあります。この時期に積立投資を減額しても問題ありません。
子どもの高校・大学期は投資額を抑えてよい
子どもが高校、大学へ進む時期は、授業料、受験、通学、一人暮らしなどの支出が増える可能性があります。
教育費を支払うために投資資産を安値で売却するより、数年前から預貯金で準備し、必要な時期は積立額を抑える方が安全です。
教育費の負担が終わった後、老後資金の積立を増やす方法もあります。
50代以降は老後資金と住宅ローンを確認する
50代以降は、投資額を増やすだけでなく、公的年金、退職金、企業年金、住宅ローン残高を確認します。
退職後まで住宅ローンが残る場合は、返済計画と手元資金を見直します。老後に使う時期が近づいた資産は、株式から現預金や値動きの比較的小さい資産へ段階的に移すことも考えます。
独立系FPが考える家計割合の整え方
金融商品の販売を目的としない独立系FPとして、家計相談で重視しているのは「何%が正解か」ではなく、「将来困らないお金の流れになっているか」です。
手取りの20%を貯蓄できていても、すべて普通預金に置いたままで、長期的な物価上昇に備えられていなければ、老後資金の実質的な価値が低下する可能性があります。
反対に、手取りの20%を投資できていても、生活防衛資金や教育費が不足していれば、家計に対してリスクを取りすぎています。
家計のお金は、使用時期によって分けると判断しやすくなります。
| 使用時期 | 主な目的 | 置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| 短期 | 生活防衛資金、1〜3年以内の支出 | 普通預金を中心にする |
| 中期 | 教育費、住宅修繕、車など3〜10年以内の支出 | 預貯金や個人向け国債など、安全性を重視する |
| 長期 | 10年以上先の老後資金 | NISA・iDeCoなども活用し、分散投資を検討する |
この分類にも絶対的な境界があるわけではありません。支出を延期できるか、損失を補えるかによって判断は変わります。
また、毎月の割合だけでなく、現在の総資産を確認します。現金が十分にあるなら長期投資を増やし、現金が不足しているなら貯蓄を優先します。住宅ローンなどの負債も合わせて見なければなりません。
理想的な家計とは、最も高い投資割合を実現している家計ではありません。今の生活を無理なく続けながら、急な支出へ対応でき、教育費や老後資金も準備できる家計です。
まとめ|家計割合は自分の生活に合わせて調整しよう
手取り別の家計割合は、自分の家計が大きく崩れていないか確認するための目安です。手取り20万円なら生活費80%・貯蓄15%・投資5%、手取り25万円なら75%・15%・10%、手取り30万円なら70%・15%・15%などが一つのモデルになります。
ただし、これらは誰もが達成すべき最低基準ではありません。同じ手取りでも、単身か子育て世帯か、共働きか一馬力か、住居費、車、教育費によって適切な割合は異なります。
家計割合を計算するときは、額面給与ではなく世帯全体の安定した手取りを使います。固定費と変動費だけでなく、税金、車検、旅行、家電などの年間特別費を12で割って加えましょう。
そのうえで、生活防衛資金、10年以内の予定支出、10年以上使わない長期資金の順にお金を分けます。生活防衛資金が不足している間は貯蓄を優先し、現金の土台ができた後に長期投資を増やします。
積立投資の金額は、NISAやiDeCoの上限ではなく、家計から決めることが大切です。積立額はライフイベントに合わせて変更しても問題ありません。相場の上げ下げではなく、収入、支出、使用目的を理由に調整します。
子どもの進学期や育休中に投資額を減らすことは、資産形成の失敗ではありません。無理に投資を続けて現金が不足するより、家計が落ち着いた後に再び増額する方が長く続けやすくなります。
家計管理の目的は、節約や投資を我慢大会にすることではありません。現在の生活を大切にしながら、急な支出と将来のライフイベントに対応できるお金の流れを作ることです。モデル割合を参考にしつつ、自分と家族にとって無理のない生活費・貯蓄・投資のバランスへ調整しましょう。








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