手取り別の理想的な家計割合とは?貯蓄・投資・生活費のバランスを独立系FPが解説

目次

はじめに

家計相談の現場で、非常によく受ける質問があります。

「収入のうち、どれくらいを貯蓄に回せばいいですか?」

「毎月いくら投資すればいいですか?」

「今は積立投資できていますが、子どもが大きくなったら同じ金額を続けられるか不安です」

このような悩みは、資産形成を始めようとしている人ほど抱えやすいものです。収入が増えれば自然に貯金できると思っていたのに、実際には家賃、食費、通信費、保険料、教育費、車の維持費などでお金が出ていき、気づけば毎月ほとんど残らないという家庭も少なくありません。

一方で、最近は新NISAの普及により、「毎月いくら積み立てるべきか」を考える人も増えています。SNSや動画では「月5万円は投資すべき」「手取りの20%を投資へ」といった情報も見かけますが、すべての家庭にそのまま当てはまるわけではありません。

家計管理で大切なのは、他人の正解を真似することではなく、自分の手取り収入、家族構成、住居費、将来のライフイベントに合わせて、無理なく続けられる割合を決めることです。

この記事では、金融商品の販売を行わない独立系FPの視点から、手取り別の理想的な家計割合、貯蓄と投資の考え方、初心者が失敗しやすいポイントを分かりやすく解説します。

家計割合を考える前に大切なこと

手取り別の家計割合を考えるとき、まず理解しておきたいのは、「理想の割合」はあくまで目安だということです。

同じ手取り25万円でも、一人暮らしなのか、夫婦二人なのか、子どもがいるのか、持ち家なのか、賃貸なのかによって家計の中身は大きく変わります。

例えば、手取り25万円の一人暮らしであれば、毎月5万円以上を貯蓄や投資に回せる人もいます。一方で、同じ手取り25万円でも、子どもがいて車が必要な地域に住んでいる場合、同じ割合で貯蓄するのはかなり難しくなります。

そのため、家計割合は「絶対に守るべきルール」ではなく、「自分の家計が大きく崩れていないか確認するための基準」として使うことが大切です。

FP相談でも、家計割合だけを見て機械的に判断することはありません。住居費が高くても、勤務先に近く、車を持たずに済み、通勤時間も短くなるなら合理的な場合があります。逆に、住居費が安くても、車の維持費や交通費が大きくかかっていれば、家計全体では負担が重くなっていることもあります。

家計は一つの項目だけで見るのではなく、全体のバランスで考えることが重要です。

家計割合の基本は「生活費・貯蓄・投資」に分けること

初心者が家計管理でつまずきやすい理由の一つは、お金の行き先を細かく分けすぎてしまうことです。

家賃、食費、光熱費、通信費、保険料、娯楽費、交際費、衣服費、美容費、教育費、車費、医療費など、項目を細かくしすぎると、管理するだけで疲れてしまいます。

最初は、家計を大きく3つに分けるだけで十分です。

1つ目は生活費です。住居費、食費、光熱費、通信費、保険料、交通費など、日々の生活を維持するためのお金です。

2つ目は貯蓄です。急な出費、生活防衛資金、数年以内に使う予定のお金を準備するためのお金です。

3つ目は投資です。老後資金や10年以上先の資産形成を目的に、長期で増やすことを目指すお金です。

この3つを分けることで、「何となく余ったら貯金する」から、「先に将来のお金を確保する」家計に変わります。

手取り別の理想的な家計割合

ここからは、手取り別に家計割合の目安を見ていきます。

あくまで目安ですが、初心者が最初に家計を整えるうえでは十分に役立ちます。

手取り20万円の場合

手取り20万円の場合、家計に余裕はそれほど大きくありません。そのため、最初から高い投資額を設定するよりも、まずは生活防衛資金を作ることを優先します。

目安としては、生活費80%、貯蓄15%、投資5%程度から始めると現実的です。

金額にすると、生活費16万円、貯蓄3万円、投資1万円です。

この段階では、投資額を無理に増やすより、毎月赤字を出さないことが重要です。手取り20万円で毎月3万円以上を投資に回そうとすると、急な出費に対応できず、結局投資を途中で取り崩すことになりやすいからです。

FP相談でも、手取り20万円台前半の方には「まず投資よりも現金の土台を作りましょう」とお伝えすることがあります。投資は大切ですが、生活防衛資金がない状態で始めると、少し相場が下がっただけで不安になり、長期投資を続けにくくなります。

手取り25万円の場合

手取り25万円になると、家計の組み方次第で貯蓄と投資の両方を始めやすくなります。

目安としては、生活費75%、貯蓄15%、投資10%程度です。

金額にすると、生活費18万7,500円、貯蓄3万7,500円、投資2万5,000円です。

このくらいの手取りで大切なのは、固定費を増やしすぎないことです。家賃、通信費、保険料、車の維持費などが膨らむと、投資に回せるお金はすぐになくなります。

特に初心者に多い失敗が、「収入が少し増えたから、生活水準も上げる」というものです。外食、サブスク、スマホ代、保険、車などを少しずつ増やしていくと、手取りが増えても貯蓄が増えません。

手取り25万円では、投資額は月1万円から2万5,000円程度でも十分です。大切なのは金額の大きさより、長く続けられることです。

手取り30万円の場合

手取り30万円になると、貯蓄と投資を本格的に分けて考えやすくなります。

目安としては、生活費70%、貯蓄15%、投資15%程度です。

金額にすると、生活費21万円、貯蓄4万5,000円、投資4万5,000円です。

この水準になると、新NISAを使った積立投資を本格的に考える人も増えます。ただし、毎月4万5,000円投資できるからといって、必ずその金額で始めるべきとは限りません。

重要なのは、今だけでなく、今後10年間続けられるかどうかです。

たとえば、結婚、出産、住宅購入、転職、教育費の増加などが見込まれる場合、今は毎月5万円投資できても、数年後には2万円しか投資できなくなる可能性があります。

積立投資は途中で金額を変えてはいけないわけではありません。しかし、ドルコスト平均法を活用する場合、投資額を頻繁に変えると、安い時に多く買う、高い時に少なく買うという積立の仕組みが崩れやすくなります。

そのため、手取り30万円の人でも、まずは10年間続けられる金額として月2万円から3万円程度で始め、余裕がある分は貯蓄や短期資金に回すという考え方も有効です。

手取り35万円の場合

手取り35万円の場合、家計にある程度の余裕が出てきます。

目安としては、生活費65%、貯蓄15%、投資20%程度です。

金額にすると、生活費22万7,500円、貯蓄5万2,500円、投資7万円です。

ただし、手取り35万円でも、住宅ローンや家賃、車、保険料、教育費が重なると余裕は一気になくなります。特に子育て世帯では、保育料、習い事、学童、食費、衣服費などが少しずつ増えていきます。

FP相談でも、「今は毎月7万円投資できていますが、子どもが中学生、高校生になると続けられるか不安です」という相談を受けます。

この場合、私は「今の投資額が将来も続けられる前提で考えない方がよい」とお伝えしています。子どもが小さい時期は比較的お金が貯まりやすい一方で、中学、高校、大学と進むにつれて教育費は重くなりやすいからです。

そのため、手取り35万円で月7万円投資できるとしても、全額を長期投資に回すのではなく、一部は教育費や住宅修繕費など、10年以内に使う可能性のあるお金として分けておくことが大切です。

手取り40万円以上の場合

手取り40万円以上になると、資産形成の自由度はかなり高くなります。

目安としては、生活費60%、貯蓄15%、投資25%程度です。

手取り40万円なら、生活費24万円、貯蓄6万円、投資10万円が目安です。

ただし、収入が高い人ほど注意したいのが、支出も同時に増えやすいことです。家賃や住宅ローンを高く設定し、車、保険、外食、旅行、教育費を増やしていくと、手取り40万円以上でも貯蓄がほとんどできない家計になります。

実務でも、収入が高いのにお金が残らない家庭は珍しくありません。その多くは、何か一つの支出が極端に悪いというより、住居費、保険料、通信費、車、外食、サブスクなどが少しずつ大きくなっています。

手取り40万円以上の家庭では、投資額を増やすことも大切ですが、それ以上に生活水準を上げすぎないことが重要です。一度上げた生活水準を下げるのは、思っている以上に難しいからです。

家計割合の目安表

手取り別の目安をまとめると、次のようになります。

手取り月収生活費貯蓄投資投資額の目安
20万円80%15%5%1万円
25万円75%15%10%2.5万円
30万円70%15%15%4.5万円
35万円65%15%20%7万円
40万円60%15%25%10万円

この表は、あくまで理想形です。実際には、子育て世帯、住宅ローンあり、車あり、親の介護ありなど、家庭ごとに調整が必要です。

特に重要なのは、「投資額の目安」をそのまま正解にしないことです。投資は10年以上使わないお金で行うのが基本です。近いうちに使う予定があるお金まで投資に回すと、必要なときに相場が下がっていて困る可能性があります。

投資額は「今できる金額」ではなく「10年続けられる金額」で考える

資産形成で非常に大切なのが、投資額の決め方です。

よくあるのが、「今月は余裕があるから5万円投資する」「来月は出費が多いから1万円にする」という方法です。

もちろん、まったく投資しないよりは良いのですが、長期積立投資では、金額を頻繁に変えすぎないことも重要です。

ドルコスト平均法は、毎月一定額を積み立てることで、価格が高い時には少なく買い、価格が安い時には多く買う仕組みです。この考え方を活かすには、なるべく一定額で長く続けることが大切です。

途中で積立額を大きく増減させると、相場が高い時に多く買ってしまったり、相場が安い時に十分に買えなかったりする可能性があります。

そのため、積立投資の金額は「今できる最大額」ではなく、「今後10年間、できるだけ変えずに続けられる金額」で決めることをおすすめします。

例えば、今は月5万円投資できるとしても、3年後に子どもの教育費が増えて月2万円しか続けられない可能性があるなら、最初から月2万円から3万円で始める方が安定します。

余裕がある分は、生活防衛資金、教育費、住宅購入資金、車の買い替え費用などに分けておけばよいのです。

10年以内に使うお金は投資に回しすぎない

家計相談で特に注意しているのが、「投資してはいけないお金まで投資に回していないか」です。

資産運用は、長期で行うほどリスクを抑えやすくなります。しかし、1年後、3年後、5年後に使う予定のお金を株式中心で運用すると、必要な時期に相場が下落している可能性があります。

たとえば、子どもの大学進学費用、住宅購入の頭金、車の買い替え資金、リフォーム費用などは、使う時期がある程度決まっています。このようなお金は、値動きの大きい投資に回しすぎない方が安全です。

10年以内に使う予定のお金は、預貯金や個人向け国債、債券型資産など、比較的安定性の高いものを中心に考える方が向いています。

一方で、老後資金のように10年以上先まで使わないお金は、株式を含む分散投資で増やすことを検討しやすくなります。

つまり、同じ「貯める」でも、使う時期によって置き場所を変える必要があります。

FP相談で多い実例:積立額を高くしすぎたケース

実際の相談で多いのが、最初に積立額を高く設定しすぎるケースです。

例えば、30代夫婦で手取り月収が合計40万円、子どもが1人という家庭がありました。新NISAをきっかけに毎月10万円の積立投資を始めたものの、半年ほどで家計が苦しくなり、相談に来られました。

家計を確認すると、毎月の収支だけを見ると10万円の積立は可能でした。しかし、年払いの保険料、車検、帰省費用、家電の買い替え、子どもの習い事、将来の教育費まで考えると、実際にはかなり無理のある金額でした。

このケースでは、積立投資を月10万円から月5万円に下げ、残りは生活防衛資金と教育費準備に回す形に変更しました。

本人たちは「積立額を下げるのは負けのような気がする」と話していましたが、資産形成で大切なのは無理をして一時的に多く投資することではありません。途中で苦しくなって売却するより、無理のない金額で10年、20年続ける方が結果的に安定しやすいのです。

初心者がやりがちな家計管理の失敗

初心者がやりがちな失敗は、大きく3つあります。

1つ目は、余ったら貯めるという考え方です。月末に余ったお金を貯金しようとしても、多くの場合は残りません。貯蓄や投資は、給料が入った直後に先取りすることが重要です。

2つ目は、投資を優先しすぎて現金が不足することです。投資は長期で増やすためのお金です。急な出費に対応する現金がない状態で投資をすると、相場が下がった時に不安になり、結局途中で売ってしまう可能性があります。

3つ目は、ライフイベントを考えずに積立額を決めることです。今は余裕があっても、結婚、出産、住宅購入、教育費、介護などで支出は変わります。今だけの家計で判断せず、少なくとも今後10年の支出を想像しておくことが大切です。

独立系FPとして考える家計割合の整え方

私が家計相談で重視しているのは、「何%が正解か」よりも、「将来困らないお金の流れになっているか」です。

手取りの20%を貯蓄できていても、すべて普通預金に置いたままで老後資金が増えていなければ、インフレに弱い家計になります。

反対に、手取りの20%を投資していても、生活防衛資金がなく、数年以内に使う教育費まで投資に回していれば、リスクを取りすぎている家計になります。

理想は、短期・中期・長期でお金を分けることです。

短期のお金は、生活防衛資金や1〜3年以内に使うお金です。これは預貯金中心で考えます。

中期のお金は、3〜10年以内に使う可能性があるお金です。教育費、住宅修繕費、車の買い替え費用などが該当します。これは安全性を重視し、預貯金や安定性の高い資産を中心に考えます。

長期のお金は、10年以上使わない老後資金などです。ここは、新NISAなどを活用しながら、長期・積立・分散投資を検討しやすい部分です。

このように分けることで、「全部貯金」「全部投資」という極端な判断を避けやすくなります。

手取り別の家計割合はライフステージで変えてよい

家計割合は、一度決めたら一生変えないものではありません。

独身時代、結婚後、子育て期、住宅購入後、子どもの進学期、退職前では、適切な割合は変わります。

独身時代や子どもが小さい時期は、比較的貯蓄や投資をしやすい時期です。この時期に生活防衛資金を作り、長期投資を始めておくと、後の家計が楽になります。

一方で、子どもが高校、大学に進む時期は、教育費の負担が大きくなります。この時期は、投資額を一時的に抑えても問題ありません。むしろ、無理に投資を続けて教育費が不足する方が危険です。

退職が近づく50代以降は、老後資金の確認と住宅ローン、保険、住居費の見直しが重要になります。積立投資を続けるだけでなく、いつ使うお金なのかを考え、少しずつリスクを下げていくことも必要です。

家計割合は、人生の変化に合わせて調整するものです。

まとめ

手取り別の理想的な家計割合は、家計を整えるうえで非常に役立つ目安になります。

手取り20万円なら生活費80%、貯蓄15%、投資5%程度。手取り25万円なら生活費75%、貯蓄15%、投資10%程度。手取り30万円なら生活費70%、貯蓄15%、投資15%程度。手取り35万円なら生活費65%、貯蓄15%、投資20%程度。手取り40万円以上なら生活費60%、貯蓄15%、投資25%程度が一つの目安です。

ただし、この割合は絶対ではありません。家族構成、住居費、車の有無、教育費、住宅ローン、将来のライフイベントによって調整が必要です。

特に投資額は、「今できる最大額」ではなく、「今後10年間、できるだけ変えずに続けられる金額」で考えることが大切です。ドルコスト平均法を活用する場合、積立額を頻繁に変えると、安い時に多く買い、高い時に少なく買うという仕組みを活かしにくくなる可能性があります。

また、10年以内に使う予定のお金は、株式中心の投資に回しすぎず、預貯金や債券型資産など安定性の高いものを中心に考える方が安心です。

家計管理で大切なのは、節約を我慢大会にすることではありません。自分と家族の将来を守りながら、今の生活も無理なく続けられるお金の流れを作ることです。

独立系FPとしての実務経験から言えば、資産形成に成功しやすい家庭は、収入が特別高い家庭ではなく、「生活費・貯蓄・投資」の役割を分け、無理のない金額で長く続けている家庭です。

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