投資信託の選び方|初心者が失敗しない4つの判断基準を独立系FPが解説

NISAの普及をきっかけに、投資信託で資産形成を始める人が増えています。投資信託は、少額から始められ、1本購入するだけで複数の企業や地域へ分散投資できる便利な金融商品です。個別株のように一社ずつ企業を分析する必要がないため、これから資産形成を始める人にも利用しやすい仕組みといえます。

しかし、実際に証券会社の画面を開くと、数多くの投資信託が並んでいます。

「オルカンがよいと聞いたけれど、本当に自分にも合うのか」「S&P500のほうが高いリターンを期待できるのではないか」「人気ランキングの上位から選べば安心なのか」「信託報酬が安い商品なら、どれでもよいのか」と迷う人も多いでしょう。

私がFPとして相談を受けるなかでも、「結局、どの投資信託を選べばよいですか」という質問は少なくありません。ただし、この質問に対して、すぐに特定の商品名を挙げるのは本来あまり適切ではありません。

なぜなら、投資信託は商品名から選ぶのではなく、資金の目的や運用できる期間から逆算して選ぶものだからです。同じ投資信託であっても、20年以上先の老後資金を準備する人と、3年後の住宅購入資金を準備する人とでは、適切な選択が異なります。

投資信託選びでは、次の順番で考えることが基本です。

  1. そのお金を何年間運用できるか考える
  2. 株式や債券などの投資対象を決める
  3. 全世界、先進国、米国などの投資地域を決める
  4. 信託報酬や純資産総額を比較し、具体的な商品を選ぶ

この記事では、金融商品の販売を目的としない独立系FPの立場から、初心者が投資信託を選ぶときの判断基準を順番に解説します。特定の商品を一律に勧めるのではなく、自分の家計やライフプランに合った選択ができるようになることを目指します。

目次

投資信託選びで初心者が失敗しやすい理由

人気商品から選んでも、自分に合うとは限らない

投資信託選びで初心者が陥りやすいのが、いきなり具体的な商品から探し始めてしまうことです。

証券会社のランキング上位の商品を選ぶ、SNSや動画で紹介されていた商品を買う、友人や同僚と同じ商品に投資するといった選び方です。こうした方法が、必ずしも間違っているわけではありません。人気商品のなかには、信託報酬が低く、長期の資産形成に使いやすいインデックスファンドも数多くあります。

全世界株式に投資する、いわゆる「オルカン」や、米国の代表的な株価指数であるS&P500に連動する投資信託は、その代表例です。投資対象が分かりやすく、コストの低い商品もあるため、長期投資の有力な選択肢になり得ます。

しかし、一般的に評価されている商品であっても、その人の資金目的や運用期間に合っていなければ、適切な選択とはいえません。

例えば、10年、20年と運用できる老後資金であれば、株式市場が一時的に下落しても、回復を待てる可能性があります。一方、数年後に住宅購入や子どもの進学で使うお金を同じ商品で運用すると、必要な時期に相場が下落し、損失を抱えたまま売却しなければならないかもしれません。

投資信託選びで大切なのは、世間で「よい商品」といわれているものを探すことではなく、自分に合う商品を見つけることです。

ランキングで分かるのは「人気」であって「適性」ではない

証券会社が公表しているランキングは、現在どのような投資信託が注目されているかを知るうえでは役立ちます。ただし、ランキングには販売金額、積立設定件数、アクセス数、値上がり率など、さまざまな集計基準があります。

直近の値上がり率を基準としたランキングでは、すでに大きく上昇した商品や、その時期に注目されている特定の業種・テーマへ集中投資する商品が上位に入ることもあります。上位に入った時点で購入しても、その後も同じように上昇するとは限りません。

また、ランキングだけを見ても、次のような情報は分かりません。

  • どの程度の値下がりが想定されるのか
  • 何年以上保有することを前提にした商品なのか
  • 特定の国や業種へどの程度集中しているのか
  • 自分が使う予定の時期まで運用を続けられるのか
  • 自分の家計がその値動きに耐えられるのか

したがって、ランキングは商品の候補を知るための参考情報として利用し、最終判断は運用目的やリスクを確認したうえで行う必要があります。

FP相談で実際にあった投資信託選びのケース

以前相談を受けた方のなかに、証券会社の人気ランキングを見て、上位に掲載されていた株式型投資信託を購入した人がいました。その投資信託自体は、決して質の悪い商品ではありませんでした。

ところが、資金の目的を確認すると、数年後に住宅購入の頭金として使う可能性のあるお金だったことが分かりました。

株式型投資信託は、長期的な企業成長を取り込む資産として有力な選択肢です。ただし、短期間では大きく値下がりする可能性があります。住宅を購入したい時期と相場の下落が重なると、購入を延期するか、損失を抱えた状態で売却することになりかねません。

その方は「ランキング上位の商品なら安心だと思っていた」「商品だけでなく、使う時期も考えるべきだった」と話していました。

このケースで問題だったのは、商品そのものではありません。長期運用を前提とする株式型投資信託と、数年後に使う可能性のある住宅購入資金の組み合わせが合っていなかったことです。

投資信託の良し悪しは、商品だけを見ても決まりません。「誰が、何のために、いつまで運用するのか」と組み合わせて判断する必要があります。

投資信託は「最後」に選ぶのが基本

投資信託を選ぶ際は、最初から商品一覧を見比べるのではなく、運用期間、投資対象、投資地域を決め、最後に具体的な商品を選ぶのが基本です。

なかでも最初に確認したいのが、そのお金を使う時期です。運用できる期間によって、取れるリスクが変わるからです。

投資におけるリスクは、単に価格が下がることだけではありません。本当に家計へ大きな影響を与えるのは、価格が下がっているときに、お金が必要になって売却せざるを得ないことです。

20年以上使わない資金であれば、一時的に大きく値下がりしても、相場の回復を待てる可能性があります。一方、3年後に使う予定の資金では、回復を待つ時間がありません。

そのため、商品を探す前に、まず資金を次のように分ける必要があります。

  • 日々の生活費や緊急時に使う生活防衛資金
  • 住宅購入費や教育費など、数年以内に使う予定の資金
  • 10年以上先の目的に向けて準備する資金
  • 老後資金など、20年以上運用できる可能性のある資金

すべてのお金を一つの投資信託で管理する必要はありません。使う時期に応じて、現預金で確保する資金と、投資信託で運用する資金を分けることが重要です。

STEP1:投資信託を選ぶ前に運用期間を決める

5年以内に使うお金は、値動きの大きい投資を避ける

住宅購入の頭金、数年以内に必要となる教育費、車の購入費など、5年以内に使う予定がある資金については、株式型投資信託へ大きく投資することを慎重に考える必要があります。

株式市場は、企業の成長や経済の拡大によって長期的な値上がりが期待できる一方、短期では金融危機、景気後退、金利の変化、戦争、感染症などの影響を受けて大きく下落することがあります。

使う時期が決まっている資金では、相場が回復するまで待てない可能性があります。このようなお金は、増やすことよりも、必要なときに必要な金額を確保できることを優先すべきです。

基本的には現預金を中心に置き、運用する場合でも値動きの大きさや元本割れの可能性を十分に確認します。「数年間、銀行に置いておくのはもったいない」という理由だけで、使い道の決まっている資金を株式型投資信託へ移すのは避けたほうがよいでしょう。

10年以上運用できるなら、株式型投資信託も検討しやすい

10年以上使う予定のない資金であれば、株式型投資信託を検討しやすくなります。

株式は短期的に大きく上下しますが、長期では企業の利益成長や経済成長を通じて、資産価値の上昇が期待できます。運用期間が長ければ、下落局面があっても積立を続け、回復を待つ時間を確保しやすくなります。

ただし、10年間運用すれば必ず利益が出るわけではありません。過去の実績が将来も続く保証はなく、運用開始時期や売却時期によって結果は変わります。

また、形式上は10年間使わない予定でも、生活防衛資金が不足していれば、失業や病気、家族の事情などによって途中で取り崩すことになるかもしれません。投資期間だけでなく、投資以外の預貯金を確保できているかも確認する必要があります。

20年以上運用できる資金は、時間を味方にしやすい

20代から40代の老後資金など、20年以上運用できる可能性がある資金では、株式の比率を高める選択肢も考えやすくなります。

長期積立では、価格が高いときにも安いときにも一定額を購入します。価格が下がったときには同じ金額で多くの口数を買えるため、購入時期を一度に集中させるリスクを抑えられます。

ただし、長期運用できるからといって、値動きを無視してよいわけではありません。株式中心の投資信託は、相場環境によって資産額が大きく減ることがあります。途中で不安になって売却してしまえば、長期投資を前提に選んだ意味が薄れてしまいます。

運用期間に余裕があっても、自分がどの程度の下落に耐えられるかを考え、無理のない積立額と資産配分にすることが大切です。

STEP2:株式・債券などの投資対象を決める

運用期間を確認したら、次は何に投資するかを考えます。投資信託の主な投資対象には、株式、債券、REIT、金などがあります。

投資信託の商品名や運用会社が違っても、値動きの大部分を左右するのは、実際にどの資産を保有しているかです。株式へ投資する商品と債券へ投資する商品では、期待できるリターンも値下がりの可能性も異なります。

株式は長期の資産形成の中心になりやすい

株式は、企業へ資金を提供し、その成長に参加する資産です。企業が利益を増やして成長すれば、株価の上昇や配当を通じたリターンを期待できます。そのため、10年、20年と続ける資産形成では、株式が中心的な役割を持ちます。

一方、株価は景気後退、金融危機、金利上昇、国際情勢などの影響を受け、短期間で大きく下落することがあります。株式型投資信託を選ぶなら、一時的な値下がりが起こり得ることを前提に、長く保有できる資金を充てる必要があります。

「長期では成長が期待できる」と「短期でも安全である」は同じ意味ではありません。数年以内に使うお金と、長期の資産形成資金を分けて考えることが重要です。

債券は資産全体の値動きを抑える役割を持つ

債券は、国や企業がお金を借りるために発行する証券です。一般的には、株式よりも値動きが小さい傾向があり、資産全体の変動を抑えるために利用されます。

特に、老後資金を使い始める時期が近づいた人や、株式だけでは値動きが大きすぎると感じる人にとって、債券は有力な選択肢です。

ただし、債券も元本が保証されるとは限りません。市場金利が上昇すると、すでに発行されている債券の価格は下がる傾向があります。発行した国や企業の信用状態が悪化するリスクもあり、外国債券には為替変動の影響も加わります。

債券を「絶対に安全な資産」と考えるのではなく、株式とは異なる特徴を持ち、一般的に値動きを抑えやすい資産と理解するのが現実的です。

REITは少額で不動産へ分散投資できる

REITとは不動産投資信託のことで、投資家から集めた資金を使い、オフィスビル、住宅、商業施設、物流施設などへ投資する仕組みです。投資先の不動産から得られる賃料収入などが、投資家への分配金の原資になります。

現物不動産を購入するにはまとまった資金が必要ですが、REITを組み入れた投資信託であれば、少額から複数の不動産へ投資できます。

不動産は、物価上昇に伴って賃料や資産価格が上がる可能性があるため、インフレに比較的強い面を持ちます。一方、金利が上昇すると借入コストが増えたり、債券など他の資産と比較した魅力が低下したりするため、REIT価格が下落することもあります。

REITは株式や債券と異なる収益源を持つものの、価格変動のあるリスク資産です。「不動産だから安定している」と決めつけず、資産全体の一部として検討する必要があります。

金は資産を増やすより、守る役割を持つ

金は、株式の配当や債券の利息のような収益を生みません。その一方で、インフレ、通貨への不安、地政学的な緊張などが高まった局面で買われることがあります。

このため、金は資産を積極的に増やす中心資産というより、株式や通貨とは異なる値動きを利用し、資産全体を守るための一部として用いられます。

ただし、金価格も常に上昇するわけではありません。市場環境によって長期間伸び悩むこともあり、保有する投資信託によっては為替変動やコストの影響も受けます。

老後までの長期資産形成では、企業成長を取り込める株式が中心になりやすく、金は必要に応じて補助的に組み入れるという考え方が分かりやすいでしょう。

投資対象を決めたら、次に考えるのが投資地域です。同じ株式型投資信託でも、全世界へ投資するオルカン、先進国株式、米国に集中するS&P500では、投資範囲とリスクが異なりますので、見てみましょう。

STEP3:株式型投資信託の投資地域を決める

株式を中心に運用すると決めたら、次に考えたいのが投資する地域です。株式型投資信託には、全世界株式、先進国株式、米国株式、日本株式、新興国株式などがあります。

同じ株式型であっても、投資する国や地域によって、成長性や値動きの大きさ、為替の影響は異なります。近年は「オルカンとS&P500のどちらがよいか」「先進国株式を選ぶ意味はあるのか」といった疑問を持つ人が増えていますが、過去のリターンだけで優劣を決めることはできません。

それぞれが、どのような考え方に基づく選択なのかを理解する必要があります。

オルカンは世界全体へ広く投資する

「オルカン」とは、一般的には日本を含む全世界の株式へ投資する投資信託を指します。先進国だけでなく、新興国にも投資できるため、1本で幅広い地域分散が可能です。

オルカンの基本的な考え方は、「将来どの国や地域が成長するかを予測するのは難しいため、世界全体を保有する」というものです。

現在は米国企業の占める割合が大きくなっていますが、これは世界の株式市場における米国企業の時価総額が大きいためです。将来、ほかの国の株式市場が成長すれば、その変化が指数の構成比率にも反映されます。

個人で成長国を予想し、投資先を何度も入れ替えなくても、市場の変化に応じて構成が調整される点は、全世界株式の大きな特徴です。

一方、世界全体へ投資するということは、好調な国だけでなく、伸び悩んでいる国も保有することを意味します。米国株式が強い時期には、米国に集中するS&P500よりリターンが低くなる可能性があります。

オルカンは、常に最も高いリターンを目指す商品というより、特定の国の将来を予想せず、世界経済全体の長期的な成長を取り込もうとする選択肢です。

先進国株式は新興国を含めずに分散する

先進国株式型の投資信託は、米国、欧州、カナダ、オーストラリアなど、主に先進国の株式へ投資します。日本で販売されている商品には、日本を除く先進国へ投資するものも多いため、投資対象に日本が含まれているかを確認しましょう。

先進国株式と全世界株式の主な違いは、新興国を含むかどうかです。

新興国には、人口増加や経済発展による高い成長余地が期待されます。その一方で、政治情勢、通貨、法制度、企業統治などの不確実性が先進国より大きくなる傾向があります。

こうした新興国特有のリスクを避けながら、米国だけに集中せず複数の先進国へ投資したい人にとって、先進国株式は一つの選択肢になります。

ただし、先進国株式も米国の構成比率が高いため、米国株式とまったく異なる値動きをするわけではありません。名称だけで判断せず、月次レポートなどで国別の構成比率を確認することが大切です。

S&P500は米国の成長を重視する

S&P500は、米国を代表する大型企業を中心に構成される株価指数です。情報技術、金融、ヘルスケア、一般消費財など、複数の業種にまたがる約500社で構成され、米国の大型株市場を幅広く表しています。S&P Dow Jones Indicesによると、米国株式市場で投資可能な時価総額の約80%をカバーしています。

米国には、世界各国で事業を展開する大企業が数多くあります。そのため、S&P500だけでも企業と業種の分散は可能です。

ただし、企業が世界中で事業を行っていることと、投資先の国が分散されていることは同じではありません。S&P500はあくまで米国企業で構成される指数であり、米国市場の評価や政策、金利、為替などの影響を強く受けます。

過去の米国株式が高いリターンを上げてきたことは、S&P500の魅力の一つです。しかし、過去に米国が強かったことだけを理由に、今後もほかの地域を上回り続けると考えるのは慎重であるべきでしょう。

S&P500は、地域分散よりも米国企業の成長を重視し、米国への集中リスクも受け入れられる人に向く選択肢です。

オルカン・先進国株式・S&P500の違い

3つの投資対象を整理すると、次のようになります。

投資対象主な特徴向いている考え方主な注意点
オルカン日本を含む先進国と新興国へ分散将来伸びる地域を予想せず、世界全体を保有したい好調な国だけでなく、伸び悩む地域も含まれる
先進国株式主に米国、欧州などの先進国へ投資新興国を除きつつ、米国以外にも分散したい米国の構成比率が高く、商品によって日本を含まない
S&P500米国の主要な大型企業へ投資米国企業の成長を重視したい米国への地域集中リスクがある

どれか一つが、すべての人にとって最も優れているわけではありません。

どの地域が今後最も成長するかを予想せず、幅広く分散したいならオルカン、新興国リスクを避けながら先進国へ分散したいなら先進国株式、米国の成長性を重視したいならS&P500というように、自分が納得できる考え方から選びます。

過去のリターンだけで選ばない

過去約20年の円換算・配当込みの指数を一定の時点で比較すると、S&P500、先進国株式、全世界株式の順にリターンが高くなった期間があります。比較すると、おおむね次の水準でした。

  • S&P500:約12.5%
  • 先進国株式:約11.1%
  • 全世界株式:約10.3%

ただし、これは特定の開始日と終了日を設定した場合の年率換算値であり、将来の期待リターンを示す数字ではありません。比較する指数、円換算の方法、配当の扱い、基準日によって結果は変わります。

また、この期間には米国の大手テクノロジー企業が大きく成長したことや、円安が進んだ時期が含まれています。日本の投資家が為替ヘッジなしの海外株式を保有していた場合、円安は円換算した資産額を押し上げる方向に働きます。

S&P500の過去の成績が高かったからといって、今後も同じリターンや順位が続くとは限りません。過去の実績は、各指数がどのように動いてきたかを知るための参考資料として利用しましょう。

オルカンが先進国株式を下回った期間がある理由

全世界株式と先進国株式の大きな違いは、新興国株式を含むかどうかです。

比較対象とした期間では、米国を中心とする先進国株式が大きく上昇した一方、新興国株式には相対的に伸び悩んだ時期がありました。そのため、新興国を含む全世界株式のリターンが、先進国株式を下回る結果になりました。

ただし、これだけを見て「新興国を含めないほうがよい」と判断することはできません。将来、新興国の経済や株式市場が先進国を上回って成長する可能性もあります。

オルカンは、新興国が必ず高いリターンを生むと考えて保有するものではありません。どの地域が将来伸びるか分からないため、新興国を含めて世界全体を保有する考え方です。

先進国株式は、新興国の成長機会を取り込めない代わりに、新興国特有の不確実性を避ける選択です。どちらを選ぶかは、直近の成績ではなく、この考え方の違いに納得できるかで判断しましょう。

STEP4:最後に具体的な投資信託を選ぶ

運用期間、投資対象、投資地域を決めたら、初めて具体的な投資信託を比較します。

同じS&P500や全世界株式に連動する商品でも、運用会社やコスト、ファンドの規模などは異なります。商品名だけを見て決めず、少なくとも信託報酬、純資産総額、分配方針、運用状況を確認しましょう。

信託報酬は同じ指数に連動する商品同士で比較する

信託報酬とは、投資信託を保有している間、運用資産から継続的に差し引かれる費用です。保有期間が長く、運用金額が大きくなるほど、わずかなコスト差でも資産形成へ与える影響が大きくなります。

特に、同じ指数への連動を目指すインデックスファンド同士では、投資対象と運用方針がほぼ同じであるため、信託報酬の低さは重要な比較材料です。

ただし、信託報酬が低ければ、無条件で最もよい商品になるわけではありません。指数からのずれや売買に伴う費用など、信託報酬以外の要因によっても実際の運用成果は変わります。

コストを比較するときは、異なる投資対象の商品を並べるのではなく、同じ指数への連動を目指す商品同士で比べることが基本です。

純資産総額と資金の流出入を確認する

純資産総額は、その投資信託で運用されている資産の規模です。純資産総額が大きく、継続的に資金が流入しているファンドは、長期にわたって運用を続けやすいと考えられます。

一方、純資産総額が極端に小さく、資金流出が続いているファンドは、運用効率が低下したり、予定より早く運用を終了する「繰上償還」が行われたりする可能性があります。

繰上償還されても、その時点の資産がすべて失われるわけではありません。しかし、長期運用を予定していた人は、途中で別の商品を選び直さなければならず、売却のタイミングも自分で決められません。

純資産総額は大きさだけでなく、月次レポートなどを使って増加傾向にあるかも確認しましょう。

分配金は多ければよいわけではない

投資信託には、運用中に分配金を支払う商品と、分配を抑えてファンド内で運用を続ける商品があります。

資産形成期には、分配金を頻繁に支払わず、運用収益を再投資する商品が基本的な選択肢になります。利益を運用へ回すことで、利益が新たな利益を生む複利効果を活用しやすくなるからです。

特に毎月分配型の商品は、毎月安定した収入を得られるように見えます。しかし、分配金は預貯金の利息とは異なり、運用益だけから支払われるとは限りません。運用状況によっては、投資した元本の一部が払い戻される「元本払戻金」となることもあります。

分配後はその金額に相当する分だけ基準価額が下がります。分配金の金額だけを見るのではなく、基準価額の変化を含むトータルリターンを確認することが大切です。

老後に資産を取り崩す人など、定期的な受け取りに意味があるケースもありますが、これから資産を増やしたい人にとって、分配金の多さは商品の優秀さを示すものではありません。

運用実績は複数の期間で確認する

運用実績を見るときは、直近1年間の成績だけで判断しないようにしましょう。短期的な成績は、その時期の相場環境に大きく左右されます。

特定の国や業種が急上昇した年には、その分野へ集中する投資信託がランキング上位に入ります。しかし、翌年も同じ環境が続くとは限らず、人気化した後に大きく下落することもあります。

設定から時間がたっている商品であれば、3年、5年、10年と複数の期間を確認します。上昇時のリターンだけでなく、株式市場が下落したときにどの程度下がったか、連動を目指す指数から大きくずれていないかも確認しましょう。

新しく設定された投資信託には、長期の運用実績がありません。その場合は、連動対象となる指数の過去の値動きや、運用会社の同種商品の実績などを参考にします。

ただし、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。実績は将来の値上がりを予測するためではなく、その商品がこれまでどのような値動きをしてきたかを理解するための材料です。

初心者が投資信託を選ぶときの確認項目

投資信託を購入する前に、次の項目を順番に確認すると、自分の目的から外れた商品を選びにくくなります。

  • 生活防衛資金を現預金で確保しているか
  • 投資するお金を使う予定は何年後か
  • 一時的に資産額が下がっても運用を続けられるか
  • 株式、債券、REIT、金のどれに投資する商品か
  • どの国や地域へ投資しているか
  • 特定の国、業種、企業へ偏りすぎていないか
  • 信託報酬などの保有コストは高すぎないか
  • 純資産総額は十分で、資金流入が続いているか
  • 分配方針は自分の運用目的に合っているか
  • 値下がりしたときにも積立を続けられる内容か

確認項目が多いように見えますが、重要なのは、商品の細かな違いをすべて覚えることではありません。「何のためのお金なのか」「いつ使うのか」「どの程度の値動きを受け入れられるのか」という3点が明確になれば、候補を絞りやすくなります。

独立系FPが考える初心者向けの投資信託の選び方

商品比較より先に家計を確認する

FP相談では、最初から希望する投資信託の商品名を聞くことはあまりありません。まず確認するのは、収入や支出、預貯金、今後のライフイベントなど、家計全体の状況です。

毎月いくらなら無理なく積み立てられるのか、病気や失業に備える生活防衛資金はあるのか、住宅購入費や教育費は別に準備できているのかを確認します。

投資信託だけを見れば長期運用に適した商品でも、家計に余裕がなければ、相場の下落時に売却せざるを得なくなる可能性があります。反対に、生活防衛資金と近い将来の支出を確保できていれば、短期的な値下がりがあっても落ち着いて運用を続けやすくなります。

投資信託選びは、商品比較だけで完結するものではなく、家計とライフプランを整える作業の一部です。

初心者は仕組みが分かりやすい商品から始める

初心者が最初から複雑な投資信託を選ぶ必要はありません。

特定の業種だけに投資するテーマ型ファンドや、複雑な仕組みを持つ商品は、相場環境によって値動きが大きくなりやすく、売買の判断も難しくなります。高い信託報酬を負担するアクティブファンドについても、コストに見合う運用が継続できるかを判断するには、ある程度の知識が必要です。

まずは、何に投資しているのか説明しやすく、低コストで幅広く分散されたインデックスファンドを中心に検討するのが現実的です。

資産形成では、複雑な商品を選ぶことよりも、自分が仕組みを理解し、相場が下落したときにも納得して持ち続けられることが重要です。

複数の商品を持てば分散になるとは限らない

初心者に多いもう一つの失敗が、複数の投資信託を買えば、それだけで分散投資になると考えることです。

例えば、オルカン、先進国株式、S&P500を同時に保有すると、商品数は3本になります。しかし、いずれにも米国の大型企業が多く含まれるため、投資先はかなり重複します。

この組み合わせが必ず悪いわけではありません。オルカンを基本にしながら米国の比率を意図的に高めるなど、目的を理解して組み合わせるなら一つの方法です。

一方、「違う商品名だから分散できている」と考えて購入すると、本人が気づかないまま米国株式への配分が高くなることがあります。

分散を確認するときは、投資信託の本数ではなく、その中にどの国、業種、企業が含まれているかを見ましょう。

値下がりしたときに続けられる商品を選ぶ

投資信託は、購入した時点ではなく、値下がりしたときに本当の相性が分かります。

資産額が10%、20%と減少したときに不安で眠れなくなったり、積立を中止したくなったりするのであれば、当初の資産配分が自分にとって積極的すぎた可能性があります。

投資で受け入れられる値下がり幅は、年齢だけでは決まりません。収入の安定性、家族構成、預貯金、今後の支出、投資経験、性格によって変わります。

株式100%の投資信託が合理的に見えても、下落時に売却してしまうのであれば、株式の比率を下げて債券や現預金を組み合わせたほうが、結果として長く続けやすくなることがあります。

理論上のリターンを最大化することよりも、自分が途中でやめずに続けられる設計にすることが大切です。

まとめ

投資信託選びで最も大切なのは、いきなり商品名から選ばないことです。証券会社の人気ランキングやSNSの情報は候補を知るためには役立ちますが、その商品が自分の家計や資金の目的に合うとは限りません。

まず、そのお金を何年間運用できるのかを確認します。数年以内に使う予定の資金は現預金を中心に考え、10年、20年と運用できる資金については、株式型投資信託も選びやすくなります。

次に、株式、債券、REIT、金などの投資対象を決めます。そのうえで、全世界、先進国、米国など、どの地域へ投資するのかを考えます。

最後に、同じ投資対象の商品同士で、信託報酬、純資産総額、分配方針、運用状況を比較し、具体的な投資信託を選びます。

オルカン、先進国株式、S&P500には、それぞれ異なる考え方があります。過去のリターンが最も高かったものを選ぶのではなく、投資範囲と集中リスクを理解し、自分が長く納得して保有できるものを選ぶことが重要です。

投資信託は、正しく活用すれば長期の資産形成を支える有力な手段になります。一方、投資には元本割れの可能性があり、誰にでも同じ商品や資産配分が適しているわけではありません。

金融商品の販売を目的としない独立系FPの立場から見ると、投資信託選びで重視したいのは、一時的に高いリターンを得ることではなく、家計とライフプランに合った方法を無理なく継続できることです。

「運用期間」「投資対象」「投資地域」「具体的な商品」という順番を守り、自分のお金の目的から投資信託を選んでいきましょう。

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